戦後昭和を元気にした
<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>
2013年10月1日号 SPECIAL FUTUREより
昭和30年代から40年代前半にかけて
日本中を笑いの渦に包んだ映画シリーズがあった。
東京都心のビジネス街を舞台にした都会派サラリーマン喜劇〈社長シリーズ〉と
下町や地方都市を舞台にした庶民感覚の風俗喜劇〈駅前シリーズ〉だ。
いずれも森繁久彌を中心に座組みされ、
〈社長〉では小林桂樹、加東大介、三木のり平、
〈駅前〉では伴淳三郎、フランキー堺といったレギュラー陣が絶妙な笑いのアンサンプルを見せそれぞれ東宝映画、東京映画を支えるドル箱長寿シリーズとなった。
今、改めて映画を見直してみると、
森繁久彌という俳優の笑いの資質が両シリーズの軸であったことに気付かされる。
ギャグで呼び込む笑いではなく、芸で誘う笑い、計算されつくしているのに、
観る者にそれを忘れさせる懐の深い笑い。
俳優・森繁久彌は確かに喜劇の人であった。
企画協力・守田洋三氏 写真提供・東宝
森繁久彌 (もりしげひさや)
1913年(大正2年)大阪枚方市に生まれる。2013年は生誕百年に当る。早稲田大学商学部を経て東宝新劇団へ入団。その後NHKアナウンサーを経て、終戦後は映画、舞台、テレビと活躍し日本を代表する俳優となる。映画初主演作は50年の『腰抜け二刀流』で、映画『社長シリーズ』『駅前シリーズ』のほか、『次郎長三国志』シリーズ、『警察日記』『夫婦善哉』『猫と庄造と二人のをんな』『暖簾』『地の涯に生きるもの』『青べか物語』『台所太平記』『男はつらいよ純情篇』『恍惚の人』『小説吉田学校』『流転の海』『四十七人の刺客』、舞台『屋根の上のヴァイオリン弾き』『佐渡島他吉の生涯J『孤愁の岸』『狐狸狐狸ばなし』『赤ひげ診療譚』、テレビ「七人の孫」「だいこんの花」「どてかぼちゃ」「元禄太平記」「三男三女婿一匹」「熱い嵐」「関ケ原」「おやじのひげ」「小石川の家」「大往生」「向田邦子ドラマスペシャル」など多数の代表作がある。菊池寛賞、紀伊國屋演劇賞、菊田一夫演劇大賞、芸術選奨文部大臣賞、文化功労賞、国民栄誉賞、紫綬褒章、勲二等瑞宝章、文化勲章、従三位など多くの受賞・受章歴がある。2009年11月10日96歳で死去。