文&写真 上田 尚也 東京都稲城市
調布の住宅街を歩いていたら、ラッパの音とともに自転車に乗った豆腐屋さんが目の前を通り過ぎた。
窓から顔を出したマダムが急いで表へ出てくる。
「もう行っちゃったかしら…」とマダム。
ボクはおもわず「豆腐屋さーん!」と大きな声を出して呼び止めていた。
マダムからも知らないおじさんからも感謝された。
豆腐屋さんの周りに鍋を持った人が集まっている光景を目の当たりにするのは初めてのことで心が躍った。
後日、ボクも鍋を持参して例の豆腐屋さんから豆腐を買った。
もちろん買うことも初めての経験で、昔は豆腐一丁がこんなに大きかったことも知らなかった。
豆腐はしっかりと豆の味がして格別に美味しかった。
きっとどこかの街でも昔と同じように夕暮れ時になるとラッパの音がしているのだろう。
決して過去の産物なんかじゃない、令和の時代でも自転車の豆腐売りは健在なのだから。