散歩は、街を一冊の本のように読むことだ。だから、スマホでの撮影は、読書感想を忘れないための、メモ書きみたいなものなのだ。この「スマホ散歩」を読んでくれた人が、それぞれの街を読書し始めたらとても嬉しい。何か楽しい風景に出会えることを願っている。
第33回 2023年1月28日
やっぱり見かけると撮りますね。この組み合わせ。レオ・レオーネの絵本「あおくんときいろちゃん」が印象深かったからかも知れない。個性と個性が混ざり合うと、別の魅力的なものが出現する。そのマジックみたいな作用が良かった。対立し合えば、みどり色は生まれない。
絵の具の場合は混ぜると緑色になるけれど、照明は白色だ。絵の具は、全部の色を混ぜ合わせると黒くなる。光りは反対に白色だ。光りは重ねると明るくなるという現象は何故か楽しくなる。だから、テレビモニターが世の中に登場した時、一体黒はどうして出したんだろうかと思った。
最近、自分が撮っている色の組み合わせに意味が発生してしまった。絵本だけを思い浮かべる状況に早くなってほしいと祈るばかりだ。
はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長、金沢美術工芸大学客員教授、アーツ前橋アドバイザーを務める。 2022年に、版画、写真、アーティストブックなどほぼ全ての作品が世田谷美術館に収蔵された。