23.11.28 update

第33回 「快獣ブースカ」、「ウルトラセブン」ほかで見られる成城界隈の風景 テレビドラマ篇 Vol.2

1932年、東宝の前身である P.C.L.(写真化学研究所)が
成城に撮影用の大ステージを建設し、東宝撮影所、砧撮影所などと呼ばれた。
以来、成城の地には映画監督や、スター俳優たちが居を構えるようになり、
昭和の成城の街はさしずめ日本のビバリーヒルズといった様相を呈していた。
街を歩けば、三船敏郎がゴムぞうりで散歩していたり、
自転車に乗った司葉子に遭遇するのも日常のスケッチだった。
成城に住んだキラ星のごとき映画人たちのとっておきのエピソード、
成城のあの場所、この場所で撮影された映画の数々をご紹介しながら
あの輝きにあふれた昭和の銀幕散歩へと出かけるとしましょう。

 2023年に、めでたく創設60周年を迎えた円谷プロダクション。社屋は当初、東宝撮影所東側の高台(旧「京都衣装」衣裳庫が怪獣倉庫になった/住所は砧七丁目)にあったので、その製作作品に砧や成城の風景が出てくるのは、ある意味当然のことである。
 ユーモラスな〝等身大怪獣〟もの「快獣ブースカ」(66~67年/日本テレビ系)でも、第2話からいきなり成城学園前駅南口の「住友銀行」(現三井住友銀行)成城支店のかつての姿が確認できる。当行は、『アワモリ君乾杯!』や『ニッポン無責任野郎』など、多くの東宝映画でその建物外観が見られるだけでなく、内部でのロケ(それも銀行ギャングに遭うシーン)も容認した懐の深い銀行である。

 そもそも本シリーズは、主人公の屯田大作少年(宮本智弘)の研究所が円谷プロの社屋を使用して撮影されたものであることから、成城・祖師谷界隈でロケした回も数多い。
 現在では超人気洋菓子店となった「成城アルプス」が出てくるのが、第12話と第20話の二編。12話(店主を演じるのは丘寵児)で、主人公の大作少年やメチャ太郎(のちの雷門ケン坊)と共に店内のお菓子を物欲しげに眺めるブースカを見れば、ラーメンだけでなく甘いものも好物だったことが分かる。その店舗も、現在とは大違いの庶民的な風情を醸しており、時代の変遷を感じざるを得ない。

▲かつての住友銀行成城支店。成城のまち初のコンクリート製建造物とも言われる 撮影:神田亨 右は1970年頃の成城アルプス。今とは大違いの店構え(成城大学卒業アルバムより)

 他にもブースカは、第5話と第21話で祖師谷商店街を、第8話では大蔵団地前の世田谷通りを歩くほか、第9話では、成城の西端に架かる「富士見橋」と「不動橋」の下を走る小田急ロマンスカーに乗り、大作一家と共に箱根を旅したりする(ロマンスカーは、「ウルトラQ」第10話「地底超特急西へ」や「ウルトラセブン」第2話「緑の恐怖」にも登場する)。

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