<時代劇専門チャンネル>が追求する本格時代劇の味わい
火花を散らすような見応えたっぷりの実(じつ)のある俳優たちの芝居の競演、
撮影、照明、大道具・小道具といった美術、音楽、劇中の料理など
細部にまで神経が行き届いた、撮影所育ちの職人たちによる熟練の技。
時代劇専門チャンネルのオリジナル時代劇には、季節感、立ち込める匂い、舞う風の音、風情、情感といったものが映し出される。
職人たちの矜持、良心といったものを見せられている思いがする。
武家社会のしがらみや理不尽さ、市井の人々の喜怒哀楽、裏の世界で生きざるを得ない人間のもがき、
義理と人情とのはざまでの苦悩、男女の情愛や純愛、行き違いやすれ違い……。
オリジナル時代劇の世界は、そんな人間の懊悩に光を当ててくれる。
まさに、見応えたっぷりの正統派時代劇の味わいがある。
時代劇は日本文化の財産として時と空間を超えて永遠である。
企画協力・画像&写真提供=日本映画放送
特集第一弾では池波正太郎原作・松本幸四郎主演の「鬼平犯科帳」を通して時代劇の魅力をご紹介したが、時代劇専門チャンネルのオリジナル時代劇のもう一つの大きな柱が、藤沢周平作品である。今回は、これまで放送された藤沢周平作品を通して、時代劇の味わいというものを紐解いてみる。
藤沢は、江戸時代を舞台に、庶民や下級武士の哀歓を描いた時代小説を多く遺しており、日本人の心の原風景に触れるような作風で、数多くの作品が映画化、テレビドラマ化されている。武家社会の階級制度や不条理に抗いながら生きる微禄の藩士や、江戸下町に生きる町人に寄り添うような温かいまなざしが、人々の心を捉えている。
時代劇専門チャンネルで、オリジナル時代劇として藤沢作品を初めて制作・放送したのは2015年、仲代達矢、檀れい、中村梅雀、北大路欣也がそれぞれ主演を務めた〝4人の名優による珠玉の四篇〟だった。藤沢周平の時代劇を映像化する一大プロジェクト〝藤沢周平 新ドラマシリーズ〟のスタートである。以降、社会の傍流にいる人々の切なさや優しさを描く藤沢周平作品の世界観を表現し続けている。仲代達矢とテレビドラマ「北の国から」の杉田成道監督がタッグを組んだ「果し合い」は、NEW YORK FESTIVALS WORLD’S BEST TV & FILMSのドラマ・スペシャル部門で金賞を受賞している。脚本は映画『春との旅』『日本の悲劇』『海辺のリア』の監督で、仲代達矢との名コンビで知られる小林政広が手がけた。
檀れい主演の「遅いしあわせ」、中村梅雀主演の「冬の日」は、いずれも日本映画の黄金期を支え、市川雷蔵が演じた眠狂四郎や、勝新太郎が演じた座頭市など多くの作品を手がけ、時代劇の名匠と謳われた京都の撮影所育ちの井上昭が演出に当たった。井上は2022年1月に鬼籍に入ったが、オリジナル時代劇の第1作、池波正太郎原作「鬼平外伝 夜兎の角右衛門」をはじめとする「鬼平外伝」シリーズ4作品、藤沢周平の代表的な短篇集『橋ものがたり』の「小ぬか雨」「殺すな」と、オリジナル時代劇8作品で監督を務め、受け継がれるべき職人の技を見せてくれている。シリーズ最新第8作の制作が決定した北大路欣也主演の「三屋清左衛門残日録」に関しては、特集第三弾にて詳しく紹介する。