20.06.13 update

西城秀樹 青春のアルバム

SPECIAL FEATURE 2019年4月1日号より

2018年5月、63歳を迎えたばかりの西城秀樹の死は衝撃をもって人々に伝わった。追悼番組などでは、〝ヒデキ〟の残した数々の伝説や打ち立てた記録が紹介され、その死後改めて西城秀樹という歌手の存在の大きさを人々は思い知らされることになった。スタジアム・コンサートを日本人ソロ・アーティストで初めて開催したのはヒデキ。いまではよく見られるペンライトもヒデキのコンサートから始まった。「YOUNG MAN(Y.M.C.A.)」はテレビ「ザ・ベストテン 」で最高得点9999点を獲得という、今でも語り継がれる伝説的記録を打ち立てた。人々の心に、さまざまなシーンでのヒデキが刻まれている。 5月16日、西城秀樹の一周忌を迎えるにあたり、同世代のエッセイスト、泉麻人さんに〝ヒデキのいた景色〟を語ってもらった 。泉さんのなかに、ヒデキのいた時代が次々と甦り、 泉さんが綴る〝ヒデキの青春の光景〟からは、ヒデキが、時代を象徴するまぎれもない 〝トップスターアイドル 〟であったことが鮮明に伝わってくる 。       企画協力・写真提供:アースコーポレーション

スタジアムが似合う男
西城秀樹と青春の光景

文=泉麻人

シンボリックなヒット曲 74 年夏「傷だらけのローラ」

1972年3月25日、「恋する季節」で歌手デビュー。高田馬場駅前でのキャンペーンのようだ。
デビュー2年目、1973年頃の〝ヒデキ〟。デビュー2年目にして早くも日本レコード大賞で歌唱賞を受賞している。また、〝ヒデキ、感激!〟でおなじみの「ハウスバーモンドカレー」のテレビCMも始まった。
ジャガーで着用したセクシーな衣装と、「抱いてやる!」と絶叫すするセリフはファンのハートを射抜いた。

 西城秀樹さんが世を去って、もう1年になろうとしている。1955年4月生まれの秀樹に対して、僕は56年4月生まれ。同時代を生きてきた人の死というのは、ひときわ切ない。
 
 そんな秀樹が僕らの前に現れたのは、 72 年、高校1年生の初夏の頃だっ た。まぁ、いまどきネットをチェックすれば、デビュー曲「恋する季節」・ 72 年3月 25 日発売――なんてデータはすぐに出てくるけれど、僕は当時独自の歌謡ベストテンをノートにつけてい た。独自といっても、好みの曲を自分本位に羅列するものではなく、テレビやラジオのベストテン番組のチャートを参考にヒット曲の情勢を割と忠実に記録していたのだ。
 
 それによると、「恋する季節」が初めて登場するのは5月 20 日土曜日(毎週土曜日に作成していたのだ)。しかし〝番外上昇曲〟の欄に18 位として記録された後、ベストテン入りはしていない。つまり、さほどヒットはしなかったのだ。ちなみに〝新御三家〟のなかでデビューの早かった野口五郎は、すでに「青いリンゴ」や「好きなん だけど」がスマッシュヒット、さらに秀樹より遅れてデビューした郷ひろみは「男の子女の子」が秋口にいきなりチャートインしている。そう、僕のこのチャートで秀樹の「恋する季節」とほぼ同時期に伊丹幸雄の「青い麦」が ベストテン下位に入っているけれど、おもえば当時、野口・郷・伊丹を〝新御三家〟とする声もあったような気がする。
「恋する季節」に続く「恋の約束」「チャンスは一度」あたりもテレビの 「ベスト 30 歌謡曲」なんかで見聞きしたイメージはあるけれど、派手なヒットまでは至らず、僕のチャートで秀樹の曲が初めてベストテン入りを果たすのは翌 73 年の春。シングル第4弾の 「青春に賭けよう」が4月14日付で9位、 21日付で7位にランクイン、これが最初のスマッシュヒットといっていいのではないだろうか。
 しかし、前期のメインライターといえる鈴木邦彦のこの曲は、同じ鈴木が手掛けていた森田健作調の〝健やかな青春ソング〟の路線で、従来の秀樹のイメージからは外れていた。秀樹らしさが確立されたのが次の「情熱の嵐」。
 当時はやりのチェイス調のイントロで始まって、なんといっても「キミが 望むなら~」の後の「ヒデキ!」の合いの手を計算したような曲構成が白眉だった。


 僕がこの曲を聴いたときに連想したのが、名前の語感も似ている西郷輝彦が歌っていた「真夏のあらし」って曲 なのだが、たぶんこの時期の西城のコンセプトのなかに〝新しい西郷〟みたいなのがあったのではないだろうか。
 
 さて、「チャンスは一度」あたりで兆候を見せていた、ダイナミックなアクションを取りこんだ絶叫型歌唱も「情熱の嵐」以降いよいよ加速していく。「ちぎれた愛」「愛の十字架」「薔薇の鎖」「激しい恋」、そして 74 年の夏、 シンボリックなヒット曲となった「傷だらけのローラ」が世に放たれた。この年初出場した紅白歌合戦のトップバッターで歌われたナンバーであり、秀樹のモノマネのスタンダードにもなっていった。 

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映画は死なず

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