(WEB版 新・日日是好日) ③
西洋医学だけでなく東洋医学、ホメオパシー、代替医療まで人間を丸ごととらえる日本のホリスティック医学の提唱者であり第一人者。雑誌¿Como le va?には通算37回の健康エッセイを連載していただいている。
11月15日に「ホリスティック医学シンポジウム2020」が開催された。テーマは
「脳科学とホリスティック医学」
~コロナうつから死後の世界まで。
演者は脳内科医にして「脳の学校」代表の加藤俊徳(としのり)氏。心療内科医で彦根市立病院緩和ケア部長にして日本ホリスティック医学協会会長の黒丸尊治(たかはる)氏。そして、かくいう私の三人。パネルディスカッションの司会は、この道の古くからの仲間で現在、協会の副会長を務める山本百合子氏である。
こうしてみると従来のシンポジウムとなんら変わりはないように見えるが、その体裁は大いに変わっていた。まずは会場が違う。いつもの300人は優に入れるお茶の水のそれではない。築地の小路のビルの5階にある小さなスタジオだ。10人足らずの協会のスタッフと撮影の機材とこれを操る2名のスタッフでもう立錐の余地もない。
私の講演は原則としてパワーポイントのような映像は使わない。丸腰である。丸腰のほうが発想が自由で大きく展開できるのである。しかし、コロナのおかげで、いわゆるオンラインと称するスタイルを何回か経験してみてわかったのである。講演というものは熱心な聴衆と共有する場のダイナミズムが高まってこその講演であることが。しかも、これは立位にかぎる。坐ってやったのでは駄目だ。
坐位で器械に向かって喋るのでは講演とはいえない。だから丸腰を止めたのである。まがりなりにもパワーポイントを用意することにしたのである。しかし徹底したアナログ人間である私にこの用意はできない。わが秘書の力を借りるのであるが、詩情豊かな画像とはいかない。
さらにパネルディスカッションにもあきれてしまう。3人の演者が並んで坐るのはいいのだが、各々の間にプラスチック製の仕切りが設けられているのだ。これではシンポジウムにはならない。互いに寄り添い合って腹蔵無く語り合ってのシンポジウムではないか。
誰がきめるのか、コロナ騒ぎが始まってからの推奨されるライフスタイルには深読みが欠けているようだ。飛沫感染を防ぐマスクの効用はわかるが、これによる免疫力の低下には誰も言及しようとはしない。
また日常生活で人と人とが寄り添い合うことを避けるのをすすめているが、人間というものは本来、互いに寄り添い合って温かい社会生活を営むからこそ人間なのである。このことをしっかり押さえての三密であることを忘れてはならない。こうして日常生活のなかからダイナミズムを失いながら人類は滅亡の道を進んでいくのではないかと空恐ろしくなることがある。
おびつ りょういち
帯津三敬病院名誉院長。日 本ホリスティック医学協会名誉会長。1936年埼玉県生まれ。 61年東京大学医学部卒業。 東京大学医学部第三外科医局長、都立駒込病院外科医長などを経て、82年帯津三敬病院を開設し院長。