プロマイドで綴る
わが心の昭和アイドル&スター
大スター、名俳優ということで語られることがない人たちかもしれないが、
青春の日々に密かに胸をこがし、心をときめかせた私だけのアイドルやスターたちがいる。
今でも当時の映画を観たり、歌声を聴くと、憧れの俳優や歌手たちの面影が浮かび、懐かしい青春の日々がよみがえる。
プロマイドの中で永遠に輝き続ける昭和の〝わが青春のアイドル〟たちよ、今ひとたび。
企画協力・写真提供:マルベル堂
日活、松竹、東宝、大映の俳優たちをご紹介してきたところで、今回は東映時代劇に欠かせない女優の豪華3本立て。題して〝東映城の三姫〟。子どもの頃からいずれの映画も制限なく見せてくれる家庭に育ったが、そうは言っても小学生が観る映画と言えば、洋画だと、ディズニーアニメや、やはりディズニーの動物ドキュメンタリー『砂漠は生きている』、当時人気だったウィーン少年合唱団が題材の『野ばら』に『青きドナウ』、『仔鹿物語』や『アラバマ物語』『鉄道員』といった子どもが登場する映画、ジョニー・ワイズミュラーの『ターザン』映画。邦画は『安寿と厨子王丸』『わんぱく王子の大蛇退治』など東映動画の他は、名監督の文芸映画というより、人気者だった九ちゃん(坂本九)の歌謡映画、東宝の加山雄三の若大将シリーズ、裕ちゃん、アキラの日活アクション映画であり、(大川)橋蔵、錦ちゃん(中村錦之助、後に萬屋錦之介)の東映のチャンバラ映画だった。当時はプログラム・ピクチャーの時代で、映画各社2週間ごとに新作映画を2本立てで上映していて、街には次回公開予定の映画の看板が立ち、夢中になってながめていたものだ。
東映の封切館にはよく通った。盆と正月の<忠臣蔵>映画や、<東海道>モノ、<中山道>モノなどのオールスター映画は絶対見逃せなかった。館内の両サイドの壁の上部には、片岡千恵蔵、市川右太衛門の両御大をはじめ、大友柳太郎、東千代之介、美空ひばり、橋蔵、錦ちゃん、高倉健、里見浩太朗、北大路欣也、松方弘樹など東映専属の俳優たちの大型プロマイドのような写真が飾られていたが、特に見入ったのは、丘さとみ、大川恵子、桜町弘子の〝東映城の三姫〟の写真だった。時代劇での扮装でしか見たことがなかったので、洋服姿の彼女たちが誰なのか最初はわからなかった。3人に対しては、僕なりのイメージがあった。大川恵子はどちらかと言えば、ノーブルなお姫様が似合う。『忠臣蔵』だとさしずめ浅野内匠頭の妻・阿久里(瑶泉院)の役だ。おきゃんな下町娘がよく似合った丘さとみは錦ちゃんとのコンビがよかった。完璧な富士額が美しい桜町弘子は、『若さま侍捕物帖』など、橋蔵との相性が良かったように思える。しっとりとした情感に富んだ役も得意だった。大友柳太郎主演の『鶯城の花嫁』(昭和33年)では、3人が鶯城の美人姉妹で共演していたが、華やかだった。今一度観てみたい。