プロマイドで綴る
わが心の昭和アイドル&スター
企画協力・写真提供:マルベル堂
大スター、名俳優ということで語られることがない人たちかもしれないが、
青春の日々に密かに胸をこがし、心をときめかせた私だけのアイドルやスターたちがいる。
今でも当時の映画を観たり、歌声を聴くと、憧れの俳優や歌手たちの面影が浮かび、懐かしい青春の日々がよみがえる。
プロマイドの中で永遠に輝き続ける昭和の〝わが青春のアイドル〟たちよ、今ひとたび。
※プロマイドの老舗・マルベル堂では、原紙をブロマイド、写真にした製品を「プロマイド」と呼称しています。ここではマルベル堂に準じてプロマイドと呼ぶことにします。
舟木一夫と同じ昭和38年に「美しい十代」でデビューし、翌年には日活で映画化され俳優デビューも果たした。「美しい十代」は現在でも青春歌謡の代表曲としてカラオケなどでも、三田明と同時代に青春の日々を過ごした世代の人たちに愛唱されている。当時は舟木を筆頭に、「青春の城下町」の梶光夫、「霧の中の少女」の久保浩、「女学生」の安達明など、十代の男性歌手たちが次々とデビューを飾り、人気者となり青春歌謡というジャンルを確立していった。なかでも三田明は十代の美しさと可愛らしさを備えた男の子としてバツグンの人気を誇った。写真家の秋山庄太郎は、「彫りが深くて西洋的な美しさ。笑顔が実にいい。昔の美男子になかったかわいらしさがプラスしている」と、三田の端正で爽やかなマスクを絶賛し、秋山が言った〝日本一の美少年〟は、そのまま三田のキャッチフレーズになった。マルベル堂でのプロマイドも414枚が撮られている。昭和の大スター石原裕次郎が316枚だから、相当人気があったということがわかる。当時の人気者のバロメーターとも言える、「月刊平凡」や「月刊明星」などの表紙にも舟木や西郷輝彦などと共に繰り返し登場している。橋幸夫、舟木、そして三田よりも一年遅れて昭和39年にデビューした西郷が、当時のトップアイドルとして、象徴的に〝御三家〟と呼ばれていたが、そこに三田が入れなかったのは、橋と三田のレコード会社が同じだったためだろうか。三田が加わると〝四天王〟と紹介されていた。
三田が師事したのは作曲家の吉田正で、フランク永井、橋幸夫、吉永小百合らと同じ吉田門下生である。吉永とは「明日は咲こう花咲こう」というデュエット曲もあり、やはり映画化もされている。三田は歌唱力にも定評があり、〝吉田学校の優等生〟とも呼ばれ、「アイビー東京」「恋人ジュリー」「カリブの花」「夕子の涙」などのヒット曲を歌う三田の姿が、テレビ各局の当時の歌謡曲のランキング番組で連日のように見られた。NHK紅白歌合戦にもデビュー翌年の昭和39年から昭和44年まで6年連続で出場しているが、デビュー曲「美しい十代」が歌われたことはない。また、三田はものまね名人としても知られ、プロの歌手たちによるものまね番組の先駆けであり、昭和42年から10年以上にわたり放送されたテレビ朝日(当時NET)日曜夜の人気番組、玉置宏司会の「象印スターものまね大合戦」では、橋、舟木、森進一らの歌まねを披露し、いずれも相当にレベルが高い出来映えで、常に大賞を獲得していた。ものまねが上手いということは、やはり歌がうまいということの証ではないだろうか。現在もその歌唱力は衰えることなく、現役として活躍中である。8月15日にはNHK-BSプレミアム「新・BS日本のうた スペシャル」に出演予定。懐かしい吉田正のヒット・ナンバーを披露してくれるのではないかと楽しみだ。
文:渋村 徹(フリーエディター)
マルベル堂
大正10年(1921)、浅草・新仲見世通りにプロマイド店として開業したマルベル堂。本年は創業100年記念のアニバーサリーイヤーに当たる。ちなみにマルベル堂のプロマイド第一号は、松竹蒲田のスター女優だった栗島すみ子。昭和のプロマイド全盛期には、マルベル堂のプロマイド売上ランキングが、スターの人気度を知る一つの目安になっていた。撮影したスターは、俳優、歌手、噺家、スポーツ選手まで2,500名以上。現在保有しているプロマイドの版数は85,000版を超えるという。ファンの目線を何よりも大切にし、スターに正面から照明を当て、カメラ目線で撮られた、いわゆる〝マルベルポーズ〟がプロマイドの定番になっている。現在も変わらず新仲見世通りでプロマイドの販売が続けられている。
マルベル堂 スタジオ
家族写真や成人式の写真に遺影撮影など、マルベル堂では一般の方々の専用スタジオでのプロマイド撮影も受けている。特に人気なのが<マルベル80’S>で、70~80年代風のアイドル衣装や懐かしのファッションで、胸キュンもののアイドルポーズでの撮影が体験できるというもの。プロマイドの王道をマルベル堂が演出してくれる。
〔住〕台東区雷門1-14-6黒澤ビル3F
あなたが心をときめかせ、夢中になった、プロマイドを買うほどに熱中した昭和の俳優や歌手を教えてください。コメントを添えていただけますと嬉しいです。もちろん、ここでご紹介するスターたちに対するコメントも大歓迎です。