戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟
2015年1月1日号 SPECIAL FUTUREより
〝世界の〞というレベルで語られる唯一の日本人俳優、三船敏郎。
国内はもとより、スピルバーグ、マーロン・ブランド、アラン・ドロン、クリント・イーストウッド、ロバート・デ・ニーロなど世界の映画人たちからも愛され、尊敬された戦後映画最大のスターである。
三船が出演したかつての広告のコピー〝男は黙ってサッポロビール〞に象徴されるように、俳優としてのイメージは、寡黙、豪快、武骨といった言葉で語られる。
『七人の侍』『椿三十郎』など三船の〝地〞でやっているように思われる演技だが、三船のノートには、細かく丁寧な字で演技プランがぎっしりと書き込まれていたという。
三船の演技は緻密な計算の上に創造されたものであった。
映画『酔いどれ天使』で組んで以来、三船を主演に16本の映画を撮った黒澤明監督は、三船の死後、「会って、三船君、本当によくやったなあ、と褒めてあげたかった。あんな素晴らしい俳優はもういません」とコメントした。
国際的映画人として世界中の映画関係者に影響を与えた三船敏郎を今一度見直してみたい。
企画協力&写真提供◎三船プロダクション
三船敏郎 みふね としろう
1920年(大正9年)生まれ。東宝第一期ニューフェイスで47年に『銀嶺の果て』で映画デビューを果たす。48年にはデビュー3作目となる『酔いどれ天使』で黒澤明監督作品に初登場し、黒澤監督との最後の作品となる65年の『赤ひげ』までに出演しなかった映画は『生きる』のみで、〝三船無くして黒澤無し〟と言われるほど黒澤映画の顔であった。また、世界中のトップ・スターたちから最も尊敬する俳優と慕われ『グラン・プリ』『太平洋の地獄』『レッド・サン』『ミッドウェイ』『1941』など数多くの海外映画にも出演している。『用心棒』と『赤ひげ』でヴェネツィア国際映画祭で2度の主演男優賞受賞をはじめ、ブルーリボン賞、毎日映画コンクール、キネマ旬報などで数多くの賞を受賞している。黒澤作品以外の映画でも『馬喰一代』『西鶴一代女』『宮本武蔵』『下町』『無法松の一生』『暗黒街の顔役』『日本誕生』『大坂城物語』『上意討ち 拝領妻始末』『日本のいちばん長い日』『黒部の太陽』『連合艦隊司令長官 山本五十六』『風林火山』『座頭市と用心棒』『待ち伏せ』『男はつらいよ 知床慕情』『竹取物語』『千利休 本覺坊遺文』『深い河』など数多くの作品に出演している。86年に紫綬褒章、93年に勲三等瑞宝章を受章している。97年12月24日死去。享年77。その死は海外のメディアでもトップニュースで報じられ、世界各国の映画人たちから弔電が届いた。