new 21.04.28 update

遊園地の観覧車

萩原朔美のスマホ散歩

散歩は、街を一冊の本のように読む事。だから、ついつい長引いてしまう。おまけに、携帯で撮影もするから散歩だか家出だか分からない。同じ場所を毎日撮る定点観測。奇異に感じた光景。同型の収集。カーブミラーに映る自分等。
面白いことに、散歩のついでだった撮影が、今では撮影するための散歩になってしまった。手段の目的化だ。これから展開する画像を見た人達が、それぞれ自分の好みで街を散歩し撮影し始めてくれたら、とても嬉しい。


第12回 2021年4月28日

 

 花火は、地上からだと平面の円だけど、上空から眺めれば球体だ。遊園地の観覧車を見ると、私はいつも巨大な花火を思い浮かべてしまう。

 だから、観覧車を撮影しようとした時、上空からのアングルはどんな形状に見えるだろうかと思った。可笑しくなった。ただの一本の線にしかならないだろうからだ。

 そこで私は、観覧車を真横から撮影して一本の縦線にしてみたのだ。なんとも愛想のない棒。発射台のロケットのような、梯子のような、どう見ても観覧車に見えない。そこが気に入って、以来縦線の観覧車を撮り続けている。

 面白いと思うのだけど、家族には不評だ。可愛くないし、意味もないと言う。意味はない。チエホフの「3人姉妹」のセリフにあるじゃない。

 マーシャ「それでも何か意味があるのでは」

 トゥーゼンバッハ「意味?・・・ほら雪が降っている。どんな意味があります?」

 意味がないのに面白いと思うことで、人生は出来ている。


photo by Gombi

はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだらなんでも書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長を務める。

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