24.06.21 update

新しい朝が来た、希望の朝だ ♪─萩原 朔美の日々   

—老体からは逃げられない。でも笑い飛ばすことは出来る—

萩原 朔美さんは1946年生まれ、11月14日で紛れもなく77歳を迎えた。喜寿、なのである。本誌「スマホ散歩」でお馴染みだが、歴としたアーチストであり、映像作家であり、演出家であり、学校の先生もやり、前橋文学館の館長であり、時として俳優にもなるエッセイストなのである。多能にして多才のサクミさんの喜寿からの日常をご報告いただく、連載エッセイ。同輩たちよ、ぼーッとしちゃいられません! 

連載 第17回 キジュからの現場報告 

 早朝散歩以外に、何か身体を動かさないと筋肉が衰えてしまう。まずい。

「老人は、筋肉の衰え、転倒、入院、杖、車椅子、で、寝たきり坂道まっしぐらだぞ!」

 と友人から注意された。

 仕方ない、さっそく早朝ラジオ体操に参加した。近所の公園で、大勢の人たちが毎日集まっている。大半が老人だ。

 やり始めて分かったことがある。

 参加者は、みんなそれぞれ自分の定位置があって、必ずその場所でやっている。

 だから、パタッと来なくなると、その空間が空く。誰が居なくなったのか一目瞭然。寝込んだとか亡くなったとか周りの人たちの会話で私にも消息が知れる。

 もう一つ。ラジオ体操のテーマは、胸を開く事にあった、という発見だ。

 それは、最初に皆んなで合唱する「ラジオ体操の歌」の歌詞に表現されている。

『喜びに胸を開け』

『健やかな胸を この香る風に開けよ』

 で、動きがやたら両手を広げて、空に向かうポーズが多い。最後は、深呼吸で胸を広げてフィニッシュ。小学校の体育の時間に必ずやらされたけれど、そこには気がつかなかった。

 現在のスタイルのラジオ体操が始まったのは昭和26年。私は5歳。きっと老いも若きも皆背中を丸めて生活していたのだろう。あるいは、ペニシリンの無かった時代の結核に対する恐怖をまだ引きずっていたのかもしれない。健康とは胸を広げる事だったのだ。

 筋肉増強とは関係ないけれど、始めるとクセになる。雪の日も会場に向かった。もちろん、定位置を決めて、そこ以外ではやらないようにしている。まるでそこが自分の領地であるかのように思えてくるから不思議なのだ。(笑)

第16回 年齢とは一筋の暗闇の道
第15回 今こそ<肉体の理性>よ!
第14回 背中トントンが懐かしい
第13回 自分の街、がなくなった
第12回 渡り鳥のように、4箇所をぐるぐる
第11回 77年余、最大の激痛に耐えながら
第10回 心はかじかまない
第 9 回 夜中の頻尿脱出
第8回 芝居はボケ防止になるという話
第7回 喜寿の幕開けは耳鳴りだった
第 6 回 認知症になるはずがない
第 5 回 喜寿の新人役者の修行とは
第4回 気がつけば置いてけぼり
第3回 片目の創造力
第2回 私という現象から脱出する
第1回 今日を退屈したら、未来を退屈すること


はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長、金沢美術工芸大学客員教授、前橋市文化活動戦略顧問を務める。 2022年に、版画、写真、アーティストブックなどほぼ全ての作品が世田谷美術館に収蔵された。


映画は死なず

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