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階段

萩原朔美のスマホ散歩

散歩は、街を一冊の本のように読む事。だから、ついつい長引いてしまう。おまけに、携帯で撮影もするから散歩だか家出だか分からない。同じ場所を毎日撮る定点観測。奇異に感じた光景。同型の収集。カーブミラーに映る自分等。
面白いことに、散歩のついでだった撮影が、今では撮影するための散歩になってしまった。手段の目的化だ。これから展開する画像を見た人達が、それぞれ自分の好みで街を散歩し撮影し始めてくれたら、とても嬉しい。


第13回 2021年5月28日

 

 階段の写真を見て、「登る階段がある」と思う人と「下る階段だ」と感じる人に分かれるらしい。
 私は瞬時に、上がる階段だと思ってしまう。登ってどこか素晴らしい場所に辿り着きたい。そんな憧れを抱いているからかも知れない。だから、階段を見かけるとついシャッターを切ってしまう。現実からの逃避願望があるのは間違いない。ここより違う何処かに行きたいのだ。(笑) 
 普通の階段よりも凄いのは螺旋階段だ。ブリューゲルのバベルの螺旋階段は天国への道だ。回転する螺旋状の階段を上がっていると目が回る。あの三半規管の酩酊感によって異界への切符を手にすることが出来るのだ。遊園地の乗り物がみんな回転するのと同じだ。回転運動により、現実から脱出して子供の自分に戻るのである。
 街を歩いていて気になる階段を見かけたら、試しに登ってみることをお勧めする。子供の頃の自分に出逢えるかも知れないからだ。


photo by Gombi

はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだらなんでも書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長を務める。

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