◆特集コラム 劇団俳優座80年の役者たち Vol.9◆
2024年2月10日に創立80周年を迎えた「劇団俳優座」。劇団俳優座で活躍した名優たちをクローズアップしてお届けする。第9回は13期生の佐藤オリエ(1943年3月25日~)。
佐藤オリエは、パリの国立ロダン美術館で日本人初の個展を開催するなど国際的にも高い評価を受けている彫刻家の佐藤忠良(ちゅうりょう)を父にもつ。父のアトリエには新劇の俳優たちが出入りしていたので、オリエは幼いころから父に連れられ舞台や映画に親しんでいた。忠良は、女性も自立できるものを身につけるようにと、自分の目に届く藝大のデザイン科の受験を薦めた。オリエもゼミナールに通い受験に励んだが、読みたい本も読めない毎日が続き「自分は芝居で身を立てたい」と宣言。当時アトリエに出入りしていた劇団民藝の下元勉に民藝入りを誘われたが、役者になる基礎をしっかり身につけようと、俳優座養成所を受験し第13期生として入所した。同期には、加藤剛、横内正、細川俊之、石立鉄男、佐藤友美、結城美栄子、稲垣美穂子、真屋順子らがいた。今思えば、その後、舞台、映画、テレビドラマなどで活躍する優秀な人材がそろった年だった。
64年に俳優座の座員となり、65年に初舞台を踏むが、76年に退団している。栗原小巻と共に俳優座若手女優として評価を得ていた。
テレビ、映画、舞台でも活躍。特にテレビドラマ「若者たち」(66)では、自身の名前が役名になった。親を亡くした5人兄妹が悩みをぶつけ合い徹底的に議論を重ねながら人生を切り拓いていく社会派ドラマで、長男を田中邦衛(俳優座養成所7期生)、次男を橋本功(俳優座養成所12期生)、三男を山本圭(俳優座養成所12期生)、四男を松山省二(現・政路)、オリエの婚約者を加藤剛が演じた。兄妹5人は毎回番組の企画から立ち合い、気合が入りすぎて、次々に過労で倒れるほどだったという。番組終了を惜しむ投書が10万通も殺到し、映画で『若者たち』『若者たちはゆく─続若者たち』と続編2本が製作された。「君の行く道は果てしなく遠い……」という主題歌は今も歌い継がれている。
69年にはテレビ版「男はつらいよ」、映画版シリーズ第2作『続 男はつらいよ』で、マドンナ・坪内夏子を演じている。NHK連続テレビ小説「チョッちゃん」(87)、今井美樹、石田純一主演の「想い出にかわるまで」(90)、鈴木保奈美主演の「愛という名のもとに」(92)では主人公の母親役など多彩な役柄を演じている。91年には舞台『薔薇の花束の秘密』で、紀伊國屋演劇賞個人賞、文化庁芸術祭賞を受賞している。