湖畔のミュージアム

文=玉村豊男

観る人をやさしく癒してくれる〝ライフアートミュージアム〟

観光地に流れる 日常の静かな時間

 

朝の湖畔を歩いてみる。

まだ人通りはほとんどない。

それでも二人、夕べからの泊り客 だろうか、桟橋の手摺りにカメラを固定してファインダーを覗いている女性客がいた。なにを狙っているのだろう。この場所からは、富士山は見えないのに。

スワンボートの乗り場にさしかかると、切符売場の小屋から初老の男性が出てきて、ひとわたりあたりの様子を見渡した後、小さなボートに乗り移り、湖の水でタオルを洗いはじめた。これからはじまる一日の営業の準備だろうか。観光地が忙しくなる前の、静けさの中に日常の時間が流れる、こんな風景が私は大好き だ。

絵を描こうと思って箱根にやってきた。

私は、花やブドウなど、植物を写 生する水彩画を描いている。たまに風景を描くこともあるが、それは外 国を旅したときで、国内の風景を題材にすることはめったにない。今回は、自分の絵を常時展示してくれているミュージアムのある土地に敬意を表して、芦ノ湖から関所や箱根神社などを歩いて写真を撮っている。

……続きはVol.38をご覧ください。

たまむら とよお

エッセイスト・画家・ワイナリー オーナー。1945年、東京生まれ。東京大学仏文科卒業。在学中にパリ大学言語学研究所に留学。 通訳、翻訳業をへて文筆業へ。91年長野県東御市に『ヴィラデスト・ガーデンファーム・アンド・ワイ ナリー』を開設、2007年、箱根に『玉村豊男ライフ アートミュージアム』開館。最新刊に『花の水彩画 レッスン』など。


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