22.07.01 update

私が造った箱根のガーデンで体感してもらいたいこと

ニコライ・バーグマン
(ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ オーナー)


 デンマークで鉢物の卸業を営んでいる父の仕事を近くで見ていた私は、15歳の頃から自分のフラワーショップを持ちたいという夢がありました。デンマークの専門学校で学び、19歳の時卒業旅行で初めて来日しました。決められた期間、父親の知人がいた埼玉県の川越の花屋さんを手伝い、都内を観光しましたが、とても刺激的な日々でした。デンマークに帰国して働きだしたものの、日本が恋しくなり再び来日、ビザの取得が自分の中で決めた1年から3年になり、そして5年とだんだん長くなって、振り返ると日本に住むようになって24年になります。ゆったりと時間が過ぎるデンマークよりも、ハイペースで働く日本の方が性に合っていたのでしょう。

 日本の花屋さんで修業をした後、「ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン」のブランドを立ち上げました。全国の様々な伝統工芸にも触れたことで、和と洋を融合した独自のフラワーデザインを確立していきました。

標高約600メートルの園内各所には、箱根の自然を生かしたプランターやオブジェが点在していて、四季折々に姿を変えていく。

 私の故郷のデンマークには急峻な山がありません。東京から2時間足らずで来ることのできる箱根は私にとって特別な場所でした。箱根に来ると日常の煩わしいことから体も心も解放され、元気になる場所だったのです。次第に箱根の大自然をキャンバスにして、今までのフラワーデザインとは違う世界を表現したくなりました。そんな場所を探していましたが、ある休日、箱根を訪れたとき、「FOR SALE」の看板が目に入りました。ここには手つかずの自然がそのまま残っていました。早速オーナーにコンタクトを取ると、「箱根が好きでこの自然を守ってくれる人に使ってもらいたい」というオーナーの思いと私の思いが共鳴し、約8500坪の土地を譲っていただくことになったのです。それが8年前のことです。それから、隣接する土地のオーナーと仲良くなりながら、土地を購入して現在約2万坪になっています。

園内にはベンチやパビリオンが設置されていて、ゆっくり自然を味わうことができる。

 自然の生態を壊さず、表情豊かな自然の中に私のフラワーデザインをバランスよく溶け込むようにすることをコンセプトにしたガーデンづくりが始まりました。ですから、色とりどりの色彩豊かなあっと驚くようなフラワーガーデンではなく、緑の木々が生かされるようにしました。

 強羅は、富士箱根伊豆国立公園の中にありますので、木の伐採も建物を建てるのも許可が必要です。いろいろな規制と折り合いをつけながら、ガーデンづくりを進めました。歩道や階段などもすべて手作りで、森の中の道も園内の落ち葉や石などを利用しています。来ていただくとわかりますが、目の高さまで伸びた熊笹の茂る中に落ち葉を敷いたは道は、古(いにしえ)の旅人たちが踏み固めてできたようになっています。鳥のさえずりも心地よく、電話の向こうの人にも鳴き声が届くほどです。「こんな素敵なところで犬と一緒に散歩ができて、ありがとうございます」というような感謝の言葉をたくさんいただいています。

順路はなく、気の向くまま歩いていくと、個性的なオブジェが。
階段も、園内の道もすべて手作り。箱根の石畳を思わせる。

 2022年4月15日、ガーデンのオープンに漕ぎつけましたが、これからの季節は私の一番好きな紫陽花が活躍します。ポットやプランターで所々に少しずつ季節の花の色を入れていきます。夏は、箱根の植物やハーブを使用したワークショップ、9月はハロウィン祭り、11月中旬からはクリスマスマーケットなど、季節に合わせたイベントも開催していきます。

 今年12月で12年目になる南青山の「ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン フラッグシップストア」は、大人の女性や子供連れのお客様から、SNSが盛んになり来店のお客様の年齢層がぐっと下がりました。今年はリニューアルをしてガラッと変えようという計画もしています。

 私の仕事は、ただ単にモノを売ることではありません。美しい花を見た人が、記憶に残るような驚きとともに、喜んでもらうことだと思っています。ですから、常に進化することを忘れません。

カフェのテーブルも倒木を利用した手作りだ。

「ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ」も一度だけでなく何度もここを訪れていただいても、毎回新たな発見をしてもらえるようなガーデンにしていきます。「今、バーグマンさんは何やっているのだろう」と思い出してもらえるようになるといいなと思います。

 そして、私が感じたように、箱根でリフレッシュして明日の活力をもらい、箱根を好きになってもらいたいです。(談・文責編集部)


ニコライ・バーグマン
1976年デンマーク・コペンハーゲン生まれ。北欧と和を融合した独自のスタイルをコンセプトとし、自身で考案したフラワーボックスは、フラワーギフトの定番として広く認知されている。その活動の幅は広く、フラワーデザインはもとより、ファッションやデザインの分野で世界有数の企業と共同デザインプロジェクトを手がける、今や日本でもっとも有名なフラワーアーティストの一人である。現在、国内外にフラワーショップを10店舗以上展開。海外では、ソウル、コペンハーゲンに出店し、ワールドワイドに活躍の場を広げている。2018年3月、福岡の太宰府天満宮にて開催した展覧会「HANAMI 2050」は約20,000人を動員し、大盛況のうちに幕を閉じた。2017年は日本とデンマークの外交関係樹立150周年の親善大使を務めた。2020年、自身が考案したフラワーボックスが20周年を迎え、「The Flower BOX Exhibiton」を六本木ヒルズで開催。2022年4月、「ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ」を開園。


ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ
〔住〕神奈川県足柄下郡箱根町強羅1323-119
〔問〕0460-83-9087

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