だが、66年、浜田光夫を悲劇が襲う。仕事終わりに先輩俳優とサパークラブで飲んでいたとき、酔客がからんできて、電気スタンドで先輩俳優を襲った。先輩俳優の隣にいた浜田の右目に電気スタンドのガラスの破片が直撃し、右目が見えなくなってしまう。救急搬送され、即手術、入院となった。もう少し遅れていたら完全失明は免れないという状況だったという。奇跡的に失明は免れたが、吉永小百合との共演予定の『愛と死の記録』は降板せざるを得なかった。渡哲也が代演を務めた。
浜田光夫が撮影所に戻ってきたのは、1年4か月ぶりだった。それが主演映画『君は恋人』である。相手役は和泉雅子が務めた。この作品には、石原裕次郎、小林旭、浅丘ルリ子、吉永小百合、渡哲也、高橋英樹、二谷英明、宍戸錠、芦川いづみ、松原智恵子、山本陽子、和田浩治、山内賢、葉山良二、川地民夫ら、日活のすべての俳優たちが友情出演している。当時、1週間に2本の新作を公開するというプログラム・ピクチャーの時代にあって、スターが集結するというのは、困難だったに違いないが、当時日活に在籍していたスターが全員顔を揃えている。さらには、舟木一夫、坂本九、ザ・スパイダース、ジャニーズ、黛ジュンといった人気歌手たちも友情出演しており、浜田光夫が愛される人物であり、多くの仲間たちがその復帰を待ち望んでいたことがわかる。
また、裕次郎、旭、ルリ子、小百合ら日活のスター俳優たちが歌手デビューを果たしたように、浜田光夫も何枚ものレコードをリリースしている。高橋英樹とのデュエット「若い仲間」、浅丘ルリ子とのデュエット「伊豆の虹」、山内賢とのデュエット「ぼくら同級生」なんていうのもある。その中で一番ヒットしたのは大映の女優だった三条江梨子とのデュエット曲「草笛を吹こうよ」だろう。2004年には国仲涼子もカバー曲としてリリースしている。
浜田光夫の履歴をたどっていると、戦後再開した日活という若い映画会社の体質や、映画という芸術の下に集った仲間たちの絆のようなものが見えてきた。浜田光夫は、日活青春映画を支えた、やはり映画史に名を刻む俳優だった。
文=渋村 徹
※プロマイドの老舗・マルベル堂では、原紙をブロマイド、写真にした製品を「プロマイド」と呼称しています。ここではマルベル堂に準じてプロマイドと呼ぶことにします。
マルベル堂
大正10年(1921)、浅草・新仲見世通りにプロマイド店として開業したマルベル堂。2021年には創業100年を迎えた。ちなみにマルベル堂のプロマイド第一号は、松竹蒲田のスター女優だった栗島すみ子。昭和のプロマイド全盛期には、マルベル堂のプロマイド売上ランキングが、スターの人気度を知る一つの目安になっていた。撮影したスターは、俳優、歌手、噺家、スポーツ選手まで2,500名以上。現在保有しているプロマイドの版数は85,000版を超えるという。ファンの目線を何よりも大切にし、スターに正面から照明を当て、カメラ目線で撮られた、いわゆる〝マルベルポーズ〟がプロマイドの定番になっている。現在も変わらず新仲見世通りでプロマイドの販売が続けられている。
マルベル堂 スタジオ
家族写真や成人式の写真に遺影撮影など、マルベル堂では一般の方々の専用スタジオでのプロマイド撮影も受けている。特に人気なのが<マルベル80’S>で、70~80年代風のアイドル衣装や懐かしのファッションで、胸キュンもののアイドルポーズでの撮影が体験できるというもの。プロマイドの王道をマルベル堂が演出してくれる。
〔住〕台東区雷門1-14-6黒澤ビル3F
読者の皆様へ
あなたが心をときめかせ、夢中になった、プロマイドを買うほどに熱中した昭和の俳優や歌手を教えてください。コメントを添えていただけますと嬉しいです。もちろん、ここでご紹介するスターたちに対するコメントも大歓迎です。