演劇にとって不可欠な観客の存在

Vol.5

三浦直之さん(ロロ主宰、劇作家、演出家)
坂本ももさん(ロロプロデューサー)
奥山三代都さん(ロロプロデューサー)

写真右から劇団ロロの主宰者で、劇作家、演出家の三浦直之さん、プロデューサーとして制作を担当する坂本ももさん、奥山三代都さん

インタビュー:2020年9月1日

劇作家、演出家の三浦直之さんが主宰する劇団「ロロ」(ろろ)。日本大学藝術学部の同級生メンバーらで結成。旗揚げ公演は『家族のこと、その他のたくさんのこと』で、本年2月16日までは、10周年記念公演『四角い2つのさみしい窓』を上演していた。新型コロナウイルス問題が日本でも表面化し、安倍首相によるイベント自粛要請が発出されたのは、千穐楽から10日後の2月26日だった。この自粛要請から日本の演劇界の活動停止が始まったとされている。予定されていた多くの作品が上演中止に追い込まれ、多くの演劇人たちが仕事の場を失った。小劇場演劇の劇団員たちは、俳優だけで食べていける人たちばかりではなく、その多くはアルバイトとの両軸で生計を立てているとも聞く。ロロのメンバーたちは、どのように新型コロナ問題と向き合い、コロナ禍の中でどのように演劇と関わり続けてきたのだろうか。9月9日に幕を開ける新作舞台の稽古場を訪ね、三浦直之さん、制作の坂本ももさん、奥山三代都さんにそれぞれの立場から話をうかがった。

劇団メンバーは全9人で、写真左から、三浦さん、坂本さん、森本華さん(俳優)、亀島一徳さん(俳優)、島田桃子さん(俳優)、篠崎大悟さん(俳優)、望月綾乃さん(俳優)、板橋駿谷さん(俳優)、奥山さん。
撮影:三上ナツ

観客の存在の大事さを
痛感した無観客での上演

――安倍首相からイベントなどに関する自粛が最初に要請された2月26日頃、劇団ロロはどんな状況だったのでしょうか。

三浦 10周年記念『四角い2つのさみしい窓』の東京公演を、1月30日からこまばアゴラ劇場で上演していて、千穐楽が2月16日でした。公演中に日本でも感染者が出たというニュースがあり、どうなるのかなという話はしていましたが、中止にすることなく千穐楽を迎えることができました。

――劇作家、演出家としての三浦さん個人のお仕事としてはどんな状況だったのでしょうか。

三浦 僕個人では、福島県いわき市の高校生と劇作ワークショップをして、彼らが書いた戯曲を上演する「いわきアリオス演劇部」という企画を3年間やってきていて、集大成としての最終発表を3月に予定していました。稽古期間中に日本でも感染者が増えてきて、上演できるかどうかギリギリまで協議が続きました。いわきアリオスの劇場さんたちも感染対策に尽力してくださったんですが、本番の前日には福島県でも感染者が出て、結局無観客上演という形になりました。無観客上演は初めての経験で、不思議な感覚でした。高校生たちに、どう説明していいかわからなかったですね。観客がいなくても演劇は成立するなんて、そんなきれいごと言えないし。高校生って、稽古中はどこかテレがあるのか声が小さかったり、なかなか力を発揮できないところがあるんですけど、観客が声を出して笑うとどんどんノッてきて、本番中に演技がよくなったりするんですよ。今回は無観客ということで、そういう感覚を味わわせてあげることができませんでしたね。やっぱり観客の存在は、当たり前のことですけど演劇にとって、めちゃめちゃ大事なものだなと痛感しました。それまで僕は物語を書くとか、作品を創るということに集中してやってきたけど、これからは鑑賞体験をどのように創るかとか、人が集まるということはどういうことなのかを、もう少し考えていかなきゃいけないなとすごく感じました。

――無観客で公演せざるを得なかった高校生たちの反応はいかがでしたか。

三浦 公演メンバーには3年生もいて、卒業式も在校生や家族の出席が制限されていたので、公演も無観客で、とてもさびしそうで、悲しそうでした。やっぱりたくさんのお客さんに観てほしかったでしょうね。

(家族のこと、その他のたくさんのこと)
2009年に旗揚げ公演として5月2日、3日に王子小劇場(正式名称は、花まる学習会王子小劇場)にて全4ステージ上演された『家族のこと、その他のたくさんのこと』。2009年度佐藤佐吉賞(王子小劇場で年間上演されたすべての公演を対象に優れた作品・戯曲・演出・舞台美術・照明・音響・衣装・宣伝美術・主演男優女優・助演男優女優の各部門を表彰するもの)の最優秀脚本賞、最優秀衣装賞を受賞。

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