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東宝映画『ゴジラ』のヒロインに抜擢され、その後俳優座に入団。華麗な容姿と清楚な佇まいで注目された河内桃子

◆特集コラム 劇団俳優座80年の役者たち Vol.7 ◆

 2024年2月10日に創立80周年を迎えた「劇団俳優座」。劇団俳優座で活躍した名優たちをクローズアップしてお届けする。第7回は8期生の河内桃子(1932年3月7日~1998年11月5日)。

 祖父は理研グループ総帥で物理学者、子爵の大河内正敏。昭和20年代にデビューした女優としては久我美子と並ぶ名家の出身である。作家の平岩弓枝とは小学校時代からの幼馴染だった。
 祖父の正敏から「これからの女性は手に職をつけることが大事」と、大学に進学するか迷っていたときにいわれ、英文タイプを身に付け貿易会社へ就職した。しかし単調な毎日から転機を図ろうと、東宝ニューフェイスに応募し合格、第6期生として東宝に入社した。同期には『ゴジラ』(54)で共演する宝田明、藤木悠、岡田眞澄らがいる。杉江敏男監督の『女心はひと筋に』で映画初出演を果たす。5作目の『ゴジラ』は54年に発生した第五福竜丸事件を背景に、反核や文明批判をテーマとした濃密な人間ドラマで、単なる娯楽映画の粋を超えていると高く評価され観客数951万人のヒット作となった。河内はヒロインの山根恵美子役を演じ、華麗な容姿と清楚な佇まいで注目を浴びた。95年には平成ゴジラシリーズの最終作の映画『ゴジラVSデストロイア』で41年ぶりに山根恵美子役を演じた。

 文芸作品の巨匠・豊田四郎が監督した『夫婦善哉』(55)の受賞パーティーで、豊田監督から「あなた、俳優座養成所でもう一度勉強してみませんか」と言われ、東宝の了解を得て応募し、58年俳優座養成所8期生として入所する。同期には山﨑努、水野久美、嵐圭史、山本耕一、小笠原良和、松本典子らがいた。パントマイムという言葉も知らず、同期の松本がなんでもこなす姿に唖然としたという。
 同じく同期の山﨑努は俳優座養成所時代、ろくに食事もできず貧血気味で演技をしていた時があった。そんな山﨑に廊下ですれ違いざまに河内が手を握ってきたと思ったら、掌には小さくたたんだ千円札があったという。(日本経済新聞・私の履歴書より) 当時の千円は今の2万円くらい。山﨑にとっては貧乏を気取っているところもあったが、河内の優しい人柄がわかるエピソードだ。

1968年上演の『三人姉妹』で、長女オーリガを演じた。(写真右)、次女マーシャに岩崎加根子(左)、三女イリーナには、前年のNHK大河ドラマ「三姉妹」で人気急上昇の栗原小巻(中)という配役だった。170㎝という長身だった河内は、後に自分は舞台に向いていると思うようになった。

 入団の年に出演した『十二夜』では、オリヴィア役を演じ、令嬢らしい品の良さと無邪気さを凛とした姿で演じ、すでに大輪の女優との評判も立った。その後も、62年、63年の『三文オペラ』、66年の『アンナ・カレーニナ』、デズデモーナを演じた仲代達矢主演の『オセロ』、79年に加藤剛が主役を演じた俳優座35周年記念公演『マクベス』、大塚道子、中野誠也、永井智雄らと共演した80年の秋元松代『山ほととぎす ほしいまま』、ポーシャを演じた82年の『ヴェニスの商人』など、清純な役から、汚れ役、精神を病む役、愛のため心を狂わせる役といった幅広い芸域で、翻訳劇から、創作劇まで多彩な舞台に立った。80年にはイギリスを代表する劇作家ハロルド・ピンターの『背信』で、紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞している。96年に中野誠也、同期生の小笠原良知と共演した『ゆの暖簾』が最後の舞台になった。新劇の世界から銀幕の世界へと戻るのではないかとも思われたが、舞台の虜になり、最後まで俳優座を離れることはなかった。

 またテレビドラマでも数々の作品に主演。TBSのホームドラマには多く出演し、石井ふく子プロデュースの作品では常連の俳優の一人であった。特に「渡る世間は鬼ばかり」では、中田喜子の義母・高橋年子役で、第3シリーズではアルツハイマー病に蝕まれていく役を見事に演じた。

 1998年11月5日死去。享年66。亡くなる直前の10月29日、病床で洗礼を受け、「マリア」の洗礼名を与えられた。
 

映画は死なず

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