オンラインでの稽古
You Tube Liveでの生配信
――緊急事態宣言という状況下、4月19日には連作短編通話劇シリーズ『窓辺』の、You Tube Liveでの生配信がスタートしました。
三浦 3月末くらいにメンバーとZoom会議したとき、外出も控えていて人と話すのも久しぶりだから、誰かと話せて安心できたというメンバーもいたんですね。僕にとってロロはすごく大事な場所で、ロロをストップさせずにメンバーの活動場所を作っていきたいなと思って、『窓辺』を企画しました。直接会うことなくZoomを使って稽古して、それぞれの部屋で上演しました。初めての試みでいろいろ難しさはあって、効率的になってしまうというか、無駄な時間がどんどんなくなっていくのを感じました。稽古で集まってコミュニケーションをとることが作品にも反映されていく、そういう時間が演劇には大切だと思ってるので、大事な要素が失われていってるような気がしました。『窓辺』と同時期に、いわきアリオスからも「アリオス演劇部」だった子たちとリモートで作品を創ってほしいと依頼をいただいたんですけど、彼らは稽古より休憩時間のほうが楽しそうだったりする瞬間があるのを感じていて。Zoom稽古だと、休憩になるとビデオ画面を一旦オフしてその場から離れて、再開のときに戻ってくるっていうことになっちゃうんですよね。それは『窓辺』でも同じで。稽古と休憩の時間がきちんと切り分けられてしまって、僕が思う演劇の楽しい瞬間がなかなか作れないなという苦労がありました。稽古をしながら、ロロを旗揚げしたときに似てるなって思いました。僕は演出家の経験なくロロを立ち上げたので、演劇ってどうやって創るんだろう? みたいな感じで、どうすれば演劇っぽくなるか試行錯誤しながら創っていました。10年続けてると、演劇っぽくするノウハウも持てるようになってきたところでまた久々に、どうやったら『窓辺』が演劇になるか、試行錯誤しましたね。
――生配信による『窓辺』を経験して、改めて思う三浦さんにとっての演劇とは?
三浦 第1話を配信して、これが演劇かどうかって考えると、その問い自体が必要かどうかっていうのもありますけど、演劇とは言えないかもなと思いました。作品としては面白いものになったけど、演劇かと問われたら、やっぱり映像作品のような気がします。劇場ってすごく大事な場所だったんだなって、あらためて感じました。観客が何か能動的に作品にアクセスしようとすることが、演劇にはすごく重要だと思うんですよ。だから、オンライン演劇は作品を創るだけでは完結しなくて、2話、3話どういうふうに観客という存在を設計するかを考えるようになっていきましたね。
――配信でご覧になった方たちの反応はいかかでしたか。
坂本 「ドネル」と「noteのサポート機能」で投げ銭を募ったら、長年観てくださってる方なんかがけっこう大きい額をくださったりして、応援の気持を込めてくださってる感じはしました。自粛生活の楽しみとして観ていただいてるのもSNSで実感できたので、励みになりましたね。
芝居への純粋な緊張感とは別の
疲弊する緊張の中での再開
――お客様をお入れしての公演ということでは9月9日からのいつ高シリーズvol.8『心置きなく屋上で』が再開公演ということになりますか。再開の目処というのはどのように立てていましたか。
坂本 やることは昨年から決まっていたんですけど、4月頃に神奈川県知事から「8月いっぱい県内施設のイベント自粛」という要請発表があって、劇場さんと連絡を取り合いながら探っていきました。9月は開館するという劇場の方針を共有したのが6月頃で、劇場が開くならばうちもやりますね、ということで、実施に向けて本格的に動き出しました。
――お客様を入れて劇場でまた公演できるということで、劇団のみなさんにとって安堵する部分、高揚感などもありましたか。
奥山 特にないですね。まだ安心はできないぞって感じだし、今もそうです。
坂本 3月に野田秀樹さんが声明を出されてから、芸術家が上から目線でみたいなこととか、演劇なんか必要ないとか、演劇が一括りにされてSNSを中心に分断が起きましたよね。実際に公演ができるかどうかということよりも、社会の中で演劇がどう扱われているのかを、ずっと観察してきたように思います。演劇界では「緊急事態舞台芸術ネットワーク」などが作られて、商業や小劇場の区別なくつながりが強化されたし、みんなである程度足並みそろえないと乗り越えられないよね、というような認識がプロデューサーたちもあるんじゃないでしょうか。どこかだけが何か特別な対策をしたら再開できる、みたいなことではないので。そういう状況で、世代やキャリアを超えて情報交換する機会も増えたには良いことだと思います。
三浦 公演できるよろこびというよりは、やっぱり不安が強いですね。これまでとはまったく違う緊張感を強いられて、疲弊するのもしんどいですし、最大限感染対策しつつ、どうやって稽古場の空気を作っていくかがすごく大事だなと思ってます。とにかく無事に千穐楽を迎えられれば良いですね。
――ロロのこのメンバーだから書ける戯曲とは、どんな世界ですか。
三浦 旗揚げからしばらくは〝ボーイ・ミーツ・ガール〟を描き続けてきました。僕らがロロを始めたときは20代前半で、若さのエネルギーみたいなものでやれてたんですよね。でもメンバーで同じように年を重ねてきて、今はみんな30歳を越えて、もうこの役はできないでしょみたいな、それを僕は考えなきゃいけないんですよね。一緒に歳を取って変わったことを、ちゃんと作品にしながら続けていきたいです。