24.06.05 update

今が盛りの江戸花菖蒲、その花姿を愛でに「堀切菖蒲園」に急ぐ

葛飾の西の玄関口には、〝花菖蒲のまち〟がある。江戸花菖蒲誕生の地としても知られ、風景画が人気の浮世絵師・歌川広重は『名所江戸百景』の中に「堀切の花菖蒲」(安政4年/1857)を描いた。現在見ごろの花菖蒲が咲き誇る「堀切菖蒲園」を訪ねてみた。

徳川将軍も訪れ、浮世絵師に描かれた菖蒲園

 京成上野駅から6つ目の駅「京成本線 堀切菖蒲園駅」に降りると、早速「菖蒲まつり」の提灯が目に入る。平日でもカメラを片手に親子連れや女性グループがにぎやかだ。

 少し歩くと、堀切天祖神社の隣に7体の石像があらわれた。これは大正15年にこの地にあった毛無池を埋め立て弁天社を建立したのが始まりで、その後平成6年6月、この地の繁栄を祈念し、七福神(弁財天、大黒天、恵比寿天、毘沙門天、福禄寿、寿老人、布袋尊)が祀られた。愛嬌のある「菖蒲七福神」は地元の人たちや観光客にも親しまれ、堀切のラッキースポットになっているようだ。閑静な住宅街には堀切菖蒲園への道しるべとして浮世絵があしらわれた立て看板が置かれ、それを目印に向かう。この季節は道端の紫陽花も美しく、来園を歓迎してくれているようだ。10分ほど歩くと、「堀切 菖蒲まつり」の垂れ幕が見えて来た。

 東京の東部低地に位置する葛飾区一帯は、江戸時代から稲作のほかに野菜や花の栽培が盛んな地域だった。その中でも堀切村で花農家を営んでいた小高伊左衛門が江戸末期に「小高園」を開園した。本所の旗本の万年録三郎から「十二一重」を、菖蒲愛好家の松平左金吾定朝から「羽衣」「立田川」などの品種を入手し株も増えていくと、「小高園」は諸大名や旗本の間でも評判になった。十二代将軍家慶とその子の家定が鷹狩の際に立ち寄ったほか、尾張藩主徳川斉荘(なりたか)からは、「日本一菖蒲」の画賛が贈られたという。

 明治・大正にかけては「吉野園」「堀切園」「観花園」、昭和初期には「四ツ木園」「菖香園」などが相次いで開園した。しかし、戦火の影響を受け食糧難になると、菖蒲園は水田と化し次々と閉鎖された。昭和17年にはついに「小高園」もなくなり堀切の花菖蒲栽培は一度消えてしまったが、終戦後唯一復興したのが、「堀切園」である。

 昭和28年に疎開させていた花菖蒲の株を植え戻し、有限会社堀切菖蒲園と名を改め営業を開始。その後昭和34年東京都が買収し、翌年「都立堀切菖蒲園」が誕生した。当時は有料だったが、昭和47年からは無料化された。そして昭和50年に葛飾区に移管、昭和52年には葛飾区指定名勝に指定された。現在では、約200種6000株に及ぶ花菖蒲が栽培されている。

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