桜なべ 中江
文明開化のグルメに持て囃された横浜の「牛鍋」に対抗し、馬肉で鍋を作ったのが成功した「桜鍋」は、吉原発祥の東京の郷土料理となった。最盛期には20軒以上あった店は現在はこちらのお店だけ。肉の種類はロース、ヒレ、バラ、霜降り、中江でしか味わえない巻ロースがあるが、馬が肥える秋から冬の季節はロースで十分と、四代目中江白志さん。まずは肉を食べ、空いた鍋にザク(白滝、麩、焼き豆腐、しめじ、江戸菜、長葱)を入れる。お鍋のあとのシメご飯セットもある。純米酒やシチリア産ワインなど桜肉にあった飲み物も嬉しい。
〔住〕台東区日本堤1-9-2
〔間〕03-3872-5398
どぜう飯田屋
合羽僑本通に面し紺色ののれんが目印の「どぜう飯田屋」は、永井荷風も通った老舗。どじょうは夏バテ回復に、冬はお腹をあたためる作用もある栄養価の高い食材だ。浅い鉄鍋の底に牛蒡を敷きその上に骨を抜いて割いたどしょうを並べ、割り下を加えて煮込む。どじょうが茶色くなったらさっと葱をのせ、山淑をさっと振ってぃただく。シャキシャキした牛蒡と割り下の相性もよく、箸が進む。五代目の飯田唯之さんの案内で、職入肌の手さばきも見せてぃただいた。どじょう鍋、ほねぬき鍋、柳川鍋、どじょう汁、なまず鍋(冬場のみ)。食わず嫌いの方も、あっさりしていて胃のもたれもなく、高たんぱくなどじょう鍋を一度ご賞味あれ。
〔住〕台東区西浅草3-3-2
〔間:] 03-3843-0881
ちゃんこ料理 一の谷
神田明神からも妻恋坂交差点からも近く、大通りから一本路地に入った隠れ家風の「ちゃんこ料埋一の谷」。店内に一歩入ると、どっしりとした欅のカウンター、壁際の古番付や化粧廻し、りっぱな神棚、趣味で集めたという骨董品の数々に見惚れてしまう。元高砂部屋の力士・一の谷さんが現役引退後に開業して40年余り
になるという。自慢のちゃんこ鍋は、昆布出汁の品の良いあっさりとした味わい。鯛のっみれにこんにゃく、自菜、えのき、葱、しいたけ、にら、豆腐が入っていて、行司の軍配の形をした人参がアクセントだ。力士の経験もあるという息子さんと奥様の三人のコンビネーションが、お鍋の暖かさと家族のぬくもりを伝えてくれる。店主との会話を楽しみなから熱燗をチビリ、チビリ、最高!です。
〔住〕千代田区外神田2-13-4
〔間) 03-3251-8500
鳥すきやき ぼたん
神田須田町の古き木造家屋の老舗が集まる一角、風情のある看板に誘われて白木の引戸を開けるとしっとりと落ち着いた佇まいが温かい。左右の取っ手に「牡」「丹」と書かれた鉄鍋に薄くスライスしたムネ肉、モモ肉、肝、砂肝などに葱、白滝、焼き豆腐が入る。備長炭でさっと焼き秘伝のたれをつかった鳥すきやきは、明治30年代から受け継がれ、現在は四代目櫻井一雄さんが暖簾を守る。この日の鶏肉は千葉県産。昭和4年に建てられた人母屋造りの建物は、奇跡的に戦災を免れ都選定歴史的建造物になった。2階は解放感のある大広間に、「大富責」と掲げられた書が格式高い。浮世のしからみを忘れ、「江戸の粋」を味わう贅沢感にしばし浸る。
〔住〕千代田区神田須田町1-15
〔間〕03-3251-0577