22.09.28 update

読書の秋。作家が愛した町の風景、町の味を訪ねてみよう

池波正太郎記念文庫

「私のふるさとは上野・浅草だ」と言っている池波正太郎の記念文庫で、書斎の再現をはじめ「旅と人生」「芝居」「映画」「食」「自筆絵画」「遺愛品」などのコーナーが設けられ、興味つきない展示がなされている。人気シリーズ『鬼平犯科帳』『剣客商売』のコーナーもある。この記念文庫全体が正太郎の書斎の色がベースになっている。
〔住〕台東区西浅草3-25-16 台東区生涯学習センター1 階台東区立中央図書館内
〔問〕03-5246-5915


台東区立 一葉記念館

『大つごもり』『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』などの名作を遺した樋口一葉は、母と妹の3人で龍泉寺町に住み、荒物駄菓子店を営みながら小説を書いていた。一葉記念館は昭和36年に日本初の女流作家の単独資料館として台東区が開設した。一葉が新五千円札の肖像に決まった後に改築され平成18年に新記念館が完成。自筆の草稿、書簡、愛用品の展示などの他、当時の龍泉寺町の町並の模型や、一葉の小説世界を紹介する展示物などもある。隣接する「一葉記念公園」には『たけくらべ』の碑がある。往時をしのびながら一葉ゆかりのこの町を歩くのも楽しい。
〔住〕台東区竜泉3-18-4〔 問〕03-3873-0004


新宿区立 林芙美子記念館

建物は林芙美子が昭和16 年から生涯を閉じる昭和26 年6月28日まで住んだ家で、芙美子は新居建築のため、建築の勉強をし、設計者や大工を連れ京都の民家を見学に行ったり、材木を見に行くなど、その思い入れは格別のものだったという。客間よりも茶の間や風呂、厠、台所など日常生活の場に十二分に金をかけたというところに、芙美子らしさがうかがえる。また、庭には寒椿、ざくろ、おおさかづきもみじなど、芙美子が愛した木々が植えられ四季折々の草花を楽しむことができる。「愛らしい美しい家を造りたいと思った」という芙美子の思いを感じながら、家の中を見て回ると味わいも一入だ。『放浪記』『浮雲』『晩菊』『めし』『下町』など芙美子の世界を、小説と映画で今一度味わってみたくなる。夫・緑敏が芙美子の遺品の管理のため建てた石蔵がギャラリーとして公開され、写真などが展示されている(悪天候の場合は閉鎖)。
〔住〕新宿区中井2-20-1 〔問〕03-5996-9207


三鷹市 山本有三記念館

建物は三鷹駅開設の5 年前大正15 年頃に建設されたもので、山本有三は執筆に適した静かな環境を求めて昭和11 年に当館に移り住んだ。『路傍の石』や戯曲『米・百俵』はこの地で執筆されている。記念館では三鷹時代の山本有三の活動や、記念館の変遷に関する資料が展示されている。「少年・少女の心に糧を与え、育成しようとした」有三の意志を継ぎ情操を深める公園「有三記念公園」(無料)が隣接されており11月頃は紅葉で赤く染まる。NHK 連続テレビ小説「おひさま」でもおなじみの〈心に太陽を持て、勇気を失うな、唇に歌を持て〉は、山本有三訳による詩の一節である。
〔住〕三鷹市下連雀2-12-27〔問〕0422-42-6233


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映画は死なず

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