23.10.05 update

『二十四の瞳』『浮雲』など昭和の銀幕で燦然ときらめいた大女優・高峰秀子のアニバーサリー大プロジェクトが発進! 「高峰秀子生誕100年プロジェクト 」

 2024年に高峰秀子さんの生誕100年の記念の年を迎えるにあたり、「高峰秀子生誕100年プロジェクト」なる一大プロジェクトが動き出し、製作発表会が実施された。5歳のとき『母』で映画デビューし、〝天才子役〟として人気を集め、55歳で俳優業を引退するまで半世紀にわたり300本以上の映画に出演し、日本映画史に大きな足跡を残した功績や、日本エッセイストクラブ賞を受賞した自伝『わたしの渡世日記』をはじめとする著作物の〝名文家〟としての才に加え、女性として、人としての生き方や美学、何を大事にし、何を失っていたのかなどを、現代の若い世代にも知ってもらいたいとの思いからプロジェクト委員会が発足し、出演映画の上映に加え、愛蔵品展示や写真展などの各種展覧会、関連書籍の刊行などによる、高峰秀子さんの俳優として、文筆家として、人としての足跡をたどるイベントが今月から開催される。

 俳優・高峰秀子と言えば、ゴールデングローブ賞外国語映画賞に輝き、国内外で高く評価されている木下惠介監督『二十四の瞳』、17本という最も多く組んだ成瀬巳喜男監督作品で、やはりフランスをはじめ海外での評価が高い『浮雲』をはじめ、『カルメン故郷に帰る』『女の園』『喜びも悲しみも幾歳月』『流れる』『女が階段を上る時』『名もなく貧しく美しく』『乱れる』『華岡青洲の妻』などなど、日本映画史に刻まれる多くの名作に出演し、人々の記憶に褪せることのないその美しい姿を焼き付けている。映画賞受賞数は日本映画界最多である。

▲『浮雲』©TOHO,.CO.LTD
▲『カルメン故郷に帰る』(1951年)監督/木下惠介 写真提供/松竹

 また、処女作『巴里ひとりある記』から『にんげん住所録』まで26作を数える著作は、現在も版を重ね、〝名文家〟との誉れも高く、文筆家としての顔も、よく知られている。著作はアジアでも人気が高く、『わたしの渡世日記』は、中国語版が2021年に刊行されており、23年に『巴里ひとりある記』が、24年に『ウー、うまい!』が中国語版で刊行される予定である。プロジェクト委員であり、松山善三・高峰秀子夫妻の養女である松山明美さんは、「高峰は自分が自分がと自分を押し出すことなく、自身を表現できる美しい文章が書ける人でした」と言う。

▲『女が階段を上がる時』©TOHO,.CO.LTD
▲『華岡青洲の妻』©KADOKAWA 1967

 また、プロジェクト発足について、ありがとうございますと謝辞を述べながら「ちゃぶ台返しのようなことを申しあげますが、高峰は私を怒っていると思います。なぜなら、高峰は自分のことで人様のお手を煩わせたり、派手なことをすることが嫌いでした」と、高峰さんの人柄を紹介しながらも、「でも、客観的に見てこのようなこと(生誕100年プロジェクト)をする値打ちがある人だと思います。映画人、文筆家として、それ以上に人としてすごく面白い人で、ずば抜けて頭のいい、人の気持がわかる人でした。若いこれからの世代の人にも、高峰のことを知っていただきたいと思ったのです」とプロジェクト立ち上げへの強い思いを語った。

 プロジェクト・サポーターとして登壇した女優の名取裕子は、「30年ほど前に九州の映画祭の折に軽く目礼を交わした程度での出会いでしたが、オーラがすごくて、小さな花柄のワンピースに小粒のパールのネックレスがすてきで、その美しさに魅せられました。本物がわかる、大事にされる、凛とした美しさと、所有なさっていた美術品などをためらうことなく寄贈なさるような、人としてのいさぎよい生き方には、強くあこがれます」と大先輩への思いを述べた。この日、名取裕子が着ていたきものは、松山明美さん曰く、〝高峰秀子好み〟の着る人を選ぶ、地味ながらも品性が香り立つようなきものだった。

 製作発表会には、プロジェクト実行委員会会長の小豆島町(映画『二十四の瞳』の人気により小豆島は一躍国内外に知られる島となり、多くの観光客が訪れるようになった) 町長大江正彦氏、後援の東宝株式会社取締役専務執行委員・市川南氏、松竹株式会社執行役員メディア事業部部長・井田寛氏、株式会社KADOKAWA取締役代表執行役・山下直久氏、一般社団法人日本映画製作者連盟事務局長・星野哲氏も出席。

 この1年、不世出の俳優であり、品性の人、非凡な人である高峰秀子という人物に、じっくりと向き合ってみたい。

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