泉屋博古館東京リニューアル記念展の掉尾を飾るのは、住友コレクションの代名詞と言われる中国青銅器の数々である。はるか三千年前、中国の殷周の時代から祖先をまつる儀式のための特別な器としてつくられた中国青銅器。青銅器には、食器、酒器、水器、楽器などの用途がある。その形は、この世のものとは思われないような奇怪な獣を模った造形であったり、表面を覆いつくす幾何学模様のような文様が刻まれていたり、中国古代の文字、金文が鋳込まれているものもある。
殷周の青銅器は、溶解した金属(銅と錫の合金)を鋳型の中に流し込んで成形されるが、土でできている一つの鋳型は一度だけの運命、複雑で繊細な造形も鋳型の段階で決まるのだからその技術力の高さに驚くばかりだ。会期期間中には、古印を作る鋳造体験のワークショップも予定されている。
日本に殷周時代の青銅器が本格的にもたらされたのは明治後期になってからだった。清朝の滅亡と中華民国の成立で政治的に動乱のあった時代、殷周青銅器はコレクターたちから大量に手放された。住友家十五代当主、住友吉左衛門友純(号:春翠(しゅんすい))は幼少期から漢籍に親しみ、中国文化の影響の強い煎茶に傾倒していた。春翠が茶会の床飾りのために購入したことに始まり、泉屋博古館の基礎となる殷周青銅器の一大コレクションが築かれた。
『不変/普遍の造形 住友コレクション 中国青銅器名品選』の会期は、1月14日(土)~2月26日(日)。中国青銅器は多種多様で、見るほどに驚き、知るとさらに面白いという魅力が詰まっている。太古のロマンに浸りながら人類の英知に歓喜することができる展覧会である。