来たる3月31日から開催される「買上展(かいあげてん)―藝大コレクション展2023―」に美術愛好家の気もそぞろになっているとか。
東京藝術大学は、岡倉天心らによって明治22年(1889)開校された「東京美術学校」を前身としているが、その当時から卒業制作を〝買い上げて〟収蔵する制度があったという。買い上げられた卒業生の名を見れば、錚々たる重鎮たちの顔ぶれに驚かされる。横山大観、菱田春草、和田英作、小磯良平、東山魁夷、高村光太郎、松田権六、富本憲吉、吉田五十八、青木繁、萬鉄五郎、藤田嗣治……。
本展の第1部では、明治から昭和前期までの東京美術学校卒業制作を中心に、たとえば横山大観の《村童観猿翁》は回顧展では必ず出品される代表作のひとつであり、和田英作の《渡頭の夕暮》や高村光太郎の《獅子吼》も彼らのデビュー作にして代表作ということができる。しかし、それらが東京美術学校の卒業制作であったことはあまり知られてこなかった。本展は近代日本美術を牽引した作家たちの原点が一堂に会するスケールといっても過言ではない。
また、東京藝術大学としては、昭和29年より卒業・修了制作の中から各科ごとに特に優秀な作品を選定し大学がこれを買い上げてきており、令和5年は買上制度が始まってから70年を迎える。学生たちを勇気づけてきたこの買上制度の位置付けは、現在では科によって異なり、慣例的に「買上賞」と称したり、首席卒業と同等とみなしたりする科もある。近年は先端芸術表現、文化財保存学、グローバルアートプラクティス、映像研究など研究領域が広がり、それと同時に表現方法も多様化してきていることから、今回の展示では、各科ごとにエリアを設けて、選定した作品を数点ずつ展示していく構成。藝大における美術教育の歩みや今日の傾向などがわかる貴重な機会となっている。
主な出品作家は、河嶋淳司、櫃田伸也、丸山智巳、橋本和幸、鎌田友介、越田乃梨子、シクステ・パルク・カキンダ、荒神明香、岡ともみ、坂田ゆかり。
「買上展(かいあげてん)―藝大コレクション展2023―」は、2023年3月31日(金)〜5月7日(日) 会場、東京藝術大学大学美術館にて開催。