千葉県佐倉市にある「DIC川村記念美術館」には、17世紀のレンブラントをはじめ印象派のモネ、ルノワールやピカソ、シャガールなどの西洋近代美術、そして20世紀後半のアメリカ美術までたくさんの作品が収蔵されている。美術館は里山の地形を生かした約3万坪の庭園の中にあり、散策路には四季折々の花が咲くなど、「美術」「建築」「自然」を楽しむことのできる場所である。
3月11日(土)~6月18日(日)の期間、DIC川村記念美術館では、「南仏」をテーマにした企画展「芸術家たちの南仏」が開催される。
19世紀末以降、多くの芸術家たちが制作の場として選んだのは、ヴァンスやニース、マルセイユなどの南仏の地だった。一年を通して過ごしやすい気候で、地中海や山々に囲まれた豊かな自然に恵まれ、芸術家たちを惹きつけた。第二次世界大戦中には、「敵性外国人」として収容されたドイツ人の芸術家たちや、亡命をめざした作家が南仏に否応なく集った。20世紀になると制作の場であるとともに、芸術家たちの交流の場となり、また地域の職人と芸術家の協働の場として重要性を高めていった。晩年マティスは、ヴァンスのロザリオ礼拝堂の内装を手掛けたが、それはマティスの集大成の大仕事になった。
本展では南仏ゆかりの、ジャン・アルプ、ハンス・ベルメール、ポール・セザンヌ、マルク・シャガール、ソニア・ドローネー、アンドレ・ドラン、ラウル・デュフィ、マックス・エルンスト、フェルナン・レジェ、アンリ・マティス、パブロ・ピカソ、ヴォルスなど約30作家の作品と関連資料約150点が展示される。
会場入り口には、初期映画の生みの親でもあるリュミエール兄弟が南仏で撮影した『ラ・シオタ駅への列車の到着』(1895年)が上映される。キスリングの《風景、パリ―ニース間の汽車》には、豪華列車「ブルー・トレイン(トラン・ブル)」が描かれている。パリから1000キロ、列車旅の様子から芸術家たちの集った南仏の風景へ想いを馳せることができることだろう。
会期中には、キュレーターズ・トークや講演会も予定され、観賞の後にはアンリ・マティスが南仏で制作した切り紙絵《ミモザ》にちなんで、イタリアの伝統菓子「ミモザケーキ」なども楽しみたい。
東京駅からは、60分で直行できる高速バスも運行している。
美術館HP : https://kawamura-museum.dic.co.jp/