21.08.03 update

スクリーンでこそ輝く〝映画スター〟高倉健

東映創立70周年

“エンターテインメント・アーカイブ”特集上映・2021夏

高倉健 生誕90周年特集Vol.1『映画館で逢いたい健さん』


 7月9日から始まった、東映創立70周年を記念しての東映娯楽映画アーカイブ特集上映。8月6日からは、4月に緊急事態宣言発出により惜しくも二日間で中止となった特集上映が満を持しての再始動ということで、「高倉健 生誕90周年特集Vol.1『映画館で逢いたい健さん』」と題し、高倉健の出演作7本が一挙上映される。1980年の『動乱』以来、実に19年ぶりの古巣東映での撮影となった『鉄道員(ぽっぽや)』は、浅田次郎のベストセラー短編集のなかの同名エピソードの映画化で、高倉健は、モントリオール映画祭で主演男優賞を受賞している。19年ぶりの東映映画出演に、東映撮影所スタッフは歓喜し、撮影所入口ではスタッフ総出で、健さんを出迎えたというエピソードが今も語り継がれている。高倉健がいかにスタッフに愛され、スタッフたちが健さんと映画を撮ることを誇りとしたかが伝わる撮影所育ちの〝映画スター〟健さんならではの素敵なエピソードだ。また、大竹しのぶ、広末涼子、吉岡秀隆、奈良岡朋子、小林稔侍、志村けんといった多彩な共演者の顔ぶれからも、高倉健というスターの存在の大きさを感じとることができる。日本アカデミー賞最優秀作品賞、毎日映画コンクール日本映画大賞も受賞している。

動乱 第1部海峡を渡る愛/第2部雪降り止まず』©東映:シナノ企画

『動乱』(80年)は『日本沈没』『八甲田山』などで知られる森谷司郎監督がメガホンをとった2部構成の大作で、高倉健同様、映画に人並み以上の思い入れを持ち現在も映画女優として映画愛を貫き通す吉永小百合との初共演作として日本映画史にその名を刻まれている。新幹線に爆弾を仕掛けた犯人と警察、国鉄(当時)の息詰まる駆け引きをサスペンス色濃く描いた国内初のパニック映画という位置づけの『新幹線大爆破』(75年)や、2021年3月時点で単行本の累計発行部数が3億部を突破している、さいとう・たかをの劇画を実写化した『ゴルゴ13』(73年)は、なかなか上映の機会も少ないのでこの機会に観ておきたい。超一流のスナイパー・暗殺者の〝ゴルゴ13〟ことデューク東郷の容姿のモデルは高倉健で、映画化に当たってはさいとうが高倉健を指名したという。テヘランでの撮影などを含め、健さんはこの役を大いに楽しんだと伝わっている。

『新幹線大爆破』©東映

 さらに東映任俠路線映画の開拓の契機となった『人生劇場 飛車角』(63年)。当時東京撮影所の所長だった後の二代目社長岡田茂は、原作者の尾崎士郎と話し合い、主人公は青成瓢吉ではなく、俠客である飛車角を主人公に〝残俠篇〟を描くことにし、飛車角とおとよ、宮川の三角関係、飛車角と老俠客・吉良常の出会いを物語の中心に据えた。飛車角に鶴田浩二、おとよに佐久間良子、吉良常に月形龍之介という布陣で、気鋭のスターとして躍進中の健さんは兄貴分飛車角の愛人と知らずおとよと結ばれる宮川を演じた。健さん主演の任俠映画の代表作と言えば『昭和残俠伝』シリーズ。今回はシリーズ最高傑作との誉れも高い第7作『昭和残俠伝 死んで貰います』(70年)が上映される。健さん演じる花田秀次郎と、池部良の風間重吉とのストイックな関係は、シリーズに欠かせない存在である。藤純子がヒロインとして花を添える。そして、今回は東宝での主演作品『八甲田山』(77年)も上映される。

 1994年に一度だけ高倉健さんの取材をしたことがあった。まず撮影スタジオでポートレートを撮り、場所を移動してインタビューを実施した。本人を前にして何とお呼びしていいのかわからず終始〝高倉さん〟と呼んだ。コーヒー好きの高倉さんのために取材場所を提供してくれた店のオーナーが、どこで調べたのか高倉さん好みのコーヒーを用意してくれ、高倉さんはゴキゲンだった。高倉さんの流儀なのかインタビューの間は、部屋に高倉さんと私の2人きりだった。私はなぜかいきなり三島由紀夫の小説『豊饒の海』の第二巻『奔馬』の話から切り出した。『奔馬』を読んでいるときに、いつも健さんの姿が浮かんでいたからだ。高倉さんは「不思議だな、誰にも話したことがないんだけど」と言って、三島由紀夫のこと、そして『奔馬』の映画化の話があったことなどを披露してくれた。高倉さんは、よくしゃべった。気がつくと1時間半が経っていた。編集者として一度はインタビューの機会を得られたらと切望していただけに、とろけそうな時間だった。同時に、これ以上話を続けたらすべてのエネルギーを吸い取られてしまいそうな疲労感も感じた。それほど映画スター・高倉健の放つパワーはすごかった。別れ際に、「次のインタビューを楽しみにしていますよ」と言ってくれた健さんの言葉は、「一緒に写真を撮ろうよ」と、私の肩に手を回して、私の背丈に合わせて膝をかがめて写っている健さんとの写真と共に、編集者としての私の宝物になっている。写真は、その日撮った高倉健唯一の笑顔だった。今回、映画館で7つの顔の健さんに逢えるのが楽しみだ。


<上映スケジュール>

◆「高倉健 生誕90周年特集Vol.1『映画館で逢いたい健さん』」


『鉄道員(ぽっぽや)』(1999年 監督:降旗康男 共演:大竹しのぶ、広末涼子、小林稔侍) 8/6~8/8
『動乱 第1部海峡を渡る愛/第2部雪降り止まず』(1980年 監督:森谷司郎 共演:吉永小百合、佐藤慶)8/6~8/12
『新幹線大爆破』(1975年 監督:佐藤純彌 共演:宇津井健、千葉真一)8/6~8/12
『ゴルゴ13』(1973年 監督:佐藤純彌 共演:アッバス・モフタリ、プリ・バナイ)8/9~8/12
『人生劇場 飛車角』(1963年 監督:沢島忠 共演:鶴田浩二、佐久間良子)8/13~8/15
『八甲田山』(東宝配給)(1977年 監督:森谷司郎 共演:北大路欣也、丹波哲郎)8/13~8/19
『昭和残俠伝 死んで貰います』(1970年 監督:マキノ雅弘 共演:池部良、富司純子)8/16~8/19


※上映期間は変更になる場合もあります。各作品のタイムテーブルは劇場ホームページでご確認ください。https://toeitheaters.com/theaters/marunouchi/


特集上映期間:8月26日(木)まで
特集上映会場:丸の内TOEI
入場料金:1,200円均一 ※各回完全入替制(一本立て興行)

◆お知らせ

東映創立70周年“エンターテインメント・アーカイブ”特集上映・2021夏の劇場招待券をプレゼントします。応募方法などはプレゼントコーナーをご覧ください。

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