Bunkamuraシアターコクーンに、劇作家・演出家の蓬莱竜太が初登場する。演劇ファンにとっては、作家や演出家が新たな劇場とタッグを組むのは、大きなトピックである。蓬莱竜太は、1999年の劇団モダンスイマーズの旗揚げ以来、全作品の作・演出を務めており、2019年の劇団公演『ビューティフルワールド』では、読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞している。外部公演も手がけ、09年の『まほろば』(新国立劇場、栗山民也演出)で岸田國士戯曲賞、16年の『母と惑星について、および自転する女たちの記録』(パルコ劇場、栗山民也演出)で鶴屋南北戯曲賞、18年の『消えていくなら朝』(新国立劇場、宮田慶子演出)でハヤカワ悲劇喜劇賞など数多くの演劇賞を受賞している。
『広島ジャンゴ』は、演劇創造を通じて広島と他の地域が〝互いに引き合う〟ような関係性作りを目指す「演劇引力廣島」プロジェクトの一環として、蓬莱が広島の劇作家と共作し、17年にJMSアステールプラザにて上演された。今回は、誰もが想像しえなかったヘビーな現実に日々立ち向かう観客に向けて、「明日が少し元気になるように」、フィクション・エンタテインメント性を高め『広島ジャンゴ 2022』と題し、脚本をリニューアル、演出、美術、音楽を一新、作品を再構築して上演される。
出演者もW主演の天海祐希、鈴木亮平はじめ豪華な顔合わせが実現した。天海が演じるのは、広島の牡蠣工場でパートタイマーとして働くシングルマザー山本のはずなのに、子連れガンマン<ジャンゴ>。鈴木は工場のシフト担当木村のはずなのに、ジャンゴの愛馬<ディカプリオ>。2人は、わけもわからぬまま、ワンマンな町長が牛耳る西部の町<ヒロシマ>で、理不尽がはびこる旧態依然とした男社会で奮闘することになる。
天海にとっては3年ぶりの舞台となる。蓬莱とは初めてながら、劇団公演を観ていて、蓬莱の伏線の回収が巧みな戯曲が魅力的で、さらに蓬莱に深い演劇愛を感じ、初タッグが非常に楽しみだ、と心を躍らせている様子。また、昨年の映画『孤狼の血 LEVEL2』で数々の映画賞に輝いた鈴木は、19年の舞台『渦が森団地の眠れない子たち』以来の蓬莱作品となるが、人間の細部にまで視線を注ぐ深い洞察力、独特のユーモア、重い設定を最終的にはエンタテインメントに仕上げる蓬莱の手腕、観客を楽しませようという強い想いに俳優として魅力を感じる、と「思いのほか早く機会が巡って来た」蓬莱作品との再会に、しかも初めて「馬」を演じることに俳優心を大いに刺激されているようだ。
そして共演者にも、映画、テレビドラマなどで魅力を発散し続け、15年の『禁断の裸体』以来の舞台出演となる野村周平、やはり映像を中心に活躍し、透明感の中に人間の心理のひだを演じてみせる中村ゆり、舞台を軸にさまざまな作品に出演し、近年はフィジカルシアター的要素を持つ作品でも活動する宮下今日子、大人計画に所属し、映像作品でも場面をさらってしまうような、観る者に強い印象を植えつける池津祥子、芸人としての巧みな話術で人々を魅了しながら、俳優としても映像、舞台と多才ぶりを発揮している藤井隆、そして、04年に、俳優デビューから20年近く経ってからの初舞台以来、毎年のように舞台に立ち、舞台俳優としても確かな爪痕を残しながら、舞台でのキャリアを積み重ねつつ俳優としての地平を開拓しているように見受けられる仲村トオル、と幅広い層の俳優がそろった。
広島弁満載の異色の〝ニュー〟ウエスタン活劇!? 最後に鈴木亮平のコメントを紹介しておこう。「劇場でナマの舞台を観劇する。その瞬間にしか感じられない、言葉にならないほどの衝撃や感動があると僕は思っています」俳優、芝居に関わるすべてのスタッフ、そして観客が同じ時間を共有しながら感動をわかちあえる空間、それが舞台の醍醐味だろう。
COCOON PRODUCTION 2022
広島ジャンゴ 2022
作・演出:蓬莱竜太
出演:天海祐希 鈴木亮平
野村周平 中村ゆり 土居志央梨 芋生悠 北香那/
宮下今日子 池津祥子 藤井隆/仲村トオル ほか
<東京公演>
〔公演日程〕4月5日(火)~4月30日(土)
〔会場〕Bunkamuraシアターコクーン
〔料金(全席指定・税込)〕S席11,000円、A席9,000円、コクーンシート5,500円
〔問〕Bunkamura チケットセンター03-3477-9999(10:00~17:00)※未就学児童のご入場はできません。
※大阪公演は5月6日(金)から5月16日(月)まで森ノ宮ピロティホールにて。