萩原朔美のスマホ散歩
散歩は、街を一冊の本のように読むことだ。だから、スマホでの撮影は、読書感想を忘れないための、メモ書きみたいなものなのだ。この「スマホ散歩」を読んでくれた人が、それぞれの街を読書し始めたらとても嬉しい。何か楽しい風景に出会えることを願っている。
第11回 2021年3月29日
地図も、Googleマップも、商店街案内図も、全て空を飛ぶ鳥の視線、鳥瞰図だ。だから、地図上で左になっていれば左に曲がる。
ところが、鳥瞰図ではなく、地中から地上を見上げるモグラの視点の地図を使う人達も世界には居る。モグラ地図だと左に曲がっていれば右に行かなければならない。
街灯をモグラのように見上げたらどんな風に見えるのだろうか。そう思って撮影してみた。面白い。街灯には思えない新鮮な形状なのだ。当たり前だと思っている見下ろす視点を、見上げる視点に変化させるだけで、世界は激変する。ちなみに、モグラの視点は珍しいものではない。星座を見る時、私達はモグラである。
はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長を務める。