萩原朔美のスマホ散歩
散歩は、街を一冊の本のように読むことだ。だから、スマホでの撮影は、読書感想を忘れないための、メモ書きみたいなものなのだ。この「スマホ散歩」を読んでくれた人が、それぞれの街を読書し始めたらとても嬉しい。何か楽しい風景に出会えることを願っている。
第18回 2021年10月31日
原因は分からない。けれども、見かけた瞬間妙だな、変だなと言う違和感が夏雲のようにわいてくる。そんな光景と出会うと、思わず撮影して何故か得したような気持ちになってしまう。(笑)
多分、毎日同じような住宅、同じような塀、同じような道路、同じような商店街、同じような駅舎ばかり見て生活しているから、少しでも変わったものと出会うと、
「何故、変わっていると感じるのだろう」
という疑問に襲われるから、立ち止まってしまうのではないだろうか。
という事は、めったに「何故か」など考えない日々を過ごしていることになる。
たしかに、散歩の最中何を見てもなんの疑問も感じる事がない。都会生活とは疑問を忘れた日常ということかも知れない。まずい、まずい。「何故?」がなくなったらそれは老化が深化している証拠だと医者に言われた事がある。
違和感を感じる風景を探そうっと!
はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長を務める。