撮影所の西方に位置する狛江市にも多くの映画人が住んだが、最も有名なのは原節子であろう。その場所は、喜多見駅の西北、現在では「電力中央研究所」の寮施設になっているところ。晩年は鎌倉に住まった原が1994年になり、この土地を処分、高額納税者に入って世間を驚かせたことは記憶に新しい。
その他、狛江の映画人には、監督の渡辺邦男・邦彦父子、丸林久信、小谷承靖(成城にも居住)、竹林進、松本正志、野村孝(日活)、松尾昭典(同)、和泉聖治、脚本家の長谷部慶次(慶治)、俳優では、嵯峨善兵(成城にも居住)、三原葉子(新東宝)、中島そのみ、堺左千夫、佐藤允、土屋嘉男(晩年は成城住まい)、中村彰、睦五郎、梅津栄、殺陣師の久世龍などがいる。こちらも実に多士済々たる顔触れである。
映画人居住エリアは岡本町にも及んでいる。
当地には「無名塾」を主宰する仲代達矢・故宮崎恭子夫妻をはじめとして、男優では神山繁(祖師谷団地から転居?)、浜田光夫、黒沢年男(現・年雄)、佐々木勝彦(千秋実の子息)、地井武男、山下真司などが住み、女優では清川虹子、八千草薫(夫の谷口千吉監督も)、大原麗子らが家を持ったことで知られる。砧同様、高台の地であることから通行人や車も少なく、テレビドラマのロケには絶好の地だった岡本町。現在では、成城とともに多くの映画人・芸能人が住む街となっている。
(註1)大蔵団地の正式名称は「大蔵住宅」。怪獣映画やウルトラマン・フリークで、日大商学部に通った柳家喬太郎師匠が子供時代に当団地(東宝や円谷プロ、日大のすぐ傍)に住んでいたとの説もあるが、確認してみたら「違います」とのことだった。
高田 雅彦(たかだ まさひこ)
1955年1月、山形市生まれ。生家が東宝映画封切館の株主だったことから、幼少時より東宝作品に親しむ。黒澤映画、クレージー映画、特撮作品には特に熱中。三船敏郎と植木等、ゴジラが三大アイドルとなる。東宝撮影所が近いという理由で選んだ成城大卒業後は、成城学園に勤務。ライフワークとして、東宝を中心とした日本映画研究を続ける。現在は、成城近辺の「ロケ地巡りツアー」講師や映画講座、映画文筆を中心に活動、クレージー・ソングの再現に注力するバンドマンでもある。著書に『成城映画散歩』(白桃書房)、『三船敏郎、この10本』(同)、『七人の侍 ロケ地の謎を探る』(アルファベータブックス)、近著として『今だから! 植木等』(同2022年1月刊)がある。