23.08.30 update

第30回 【成城シネマトリビア】 司葉子、星由里子、浜美枝ら東宝映画の女優たちも歩いた成城の桜並木 Vol.2

 司さん演じるバーの女給(ホステス)と宝田明のエリート・サラリーマンとの熱烈な恋愛を高らかに謳い上げたのが『若い恋人たち』(59年/千葉泰樹監督)なるラブロマンス映画。この作品では成城五丁目の旧中村邸が宝田明の家のロケ地となっているが、もともと田園調布が舞台であることから、成城の桜並木が出現することはない。
 今はなき洋風の大邸宅・旧中村邸が撮影に使用された作品はこれまで度々紹介したとおりで、成城では斜め前に位置した旧龍野邸と並ぶ、絶好のロケ・スポットであった。

▲通りの右手が旧中村邸。植木等も宇津井健も園まりも、そして少年ジェットもここで撮影をした。通りでは『お姐ちゃんはツイてるぜ』(60年)や、大林宣彦監督『EMOTION=伝説の午後・いつか見たドラキュラ』(66年)が撮影。TVドラマ「太陽にほえろ」でも、時折カーチェイスが行われた(筆者撮影)

 司さんに伺った話で面白かったのは、次のエピソード。
 池部良の肝入りにより『君死に給うことなかれ』(54年/丸山誠治監督)でデビューした司さんは、新人ながら会社からとても大事にされていた女優であった。なにせ鳥取県有数の名家・庄司家のお嬢様であるから、東宝も腫れ物に触るような扱いをしたのだろう。司さんにはお付きの女性(なんと笠置シヅ子の元付き人:東宝では普通そうしたことはしない)が付けられ、結髪部屋を利用するにあたっても、窓に設えられた‶特設階段〟からの出入りを許された、数少ない女優の一人となる。
 俳優課の建物に控室はあったものの、当時、トップクラスの女優さんはこの結髪部屋で休憩や食事をとるのが当たり前になっていた。ただし、この特権(窓からの出入り)を許されていたのは、原節子や高峰秀子、岡田茉莉子など、数人の大物女優のみ。ある女優さんが希望したところ、すげなく断られたとのことだから、司さんはやはり、東宝の「未来のトップ女優」と目された存在だったのだろう。

 ちなみに、結髪の中尾さかゑと親しかった原節子は、砧六丁目の中尾邸(近所に成瀬己喜男、有馬稲子、早坂文雄、堀内甲、宇佐美仁、やはり結髪の沼田和子などの家が密集する、いわば〝東宝映画村〟の一角)にもしょっちゅう遊びに出かけていたそうだ。

 厳密には東宝女優とは言えないが、数多くの東宝娯楽映画に出演したのが〝三人娘〟の一人、江利チエミである。『サザエさんの新婚家庭』(59年)やシリーズ最終作となった第10作『福の神サザエさん一家』(61年)でも、成城の桜並木通りにあった「ローズ美容院」前にてサザエさんによる愉快なパフォーマンスが繰り広げられる。

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