昭和のウルトラ・シリーズに「ウルトラマンA」(72~73年)、「ウルトラマンタロウ」(73~74年)、「ウルトラマンレオ」(74~75年)という三部作がある。
まず、「A」だが、第6話で百目坂(「百目の家」が建つ岡本町の高台から仙川側に下る坂道)、第9話で南口のマンション「成城コンド」、第13話で不動橋、第36話では仙川沿いの遊歩道の様子が見られる。成城コンドと仙川の遊歩道はウルトラ・シリーズのほか、「赤い迷路」、「気になる嫁さん」などでも頻繁に使われたロケ・スポットである。
「タロウ」では、前回ご紹介した洋館「属(さっか)邸」(主人公・篠田三郎の下宿先となる)のほか、不動橋や大蔵団地、成城南口にあった銭湯「成城湯」、成城学園初等学校に隣接する「祖師谷小学校」、成城から祖師谷方面に向かう道に架かる「成城橋」、さらには多くの映画に登場する成城学園正門前のいちょう並木がロケ地となり、かなり成城色の強いシリーズとなっている。
「不動橋」は何度かご紹介した「富士見橋」の西に位置し、少年ジェットが疾走したほか、大林宣彦監督が自宅から成城駅南口にある事務所「PSC」に通う際に使う橋でもあった。大映映画『女賭博師丁半旅』(69年)で江波杏子が渡る姿を見たときは、かなり違和感があったものだが。
『レオ』は、主人公のおおとりゲンが「不動橋」横の家に下宿する設定で、円谷プロ作品らしく、世田谷区立体育館やその周辺が何度か登場する。さらには、「成城橋」下の仙川沿い遊歩道に怪人が出現したり(第17話)、「労研」前踏切脇の坂道(註3)で子供たちが怪物体を発見したり(第40話)、大蔵運動公園脇にある急勾配の坂道に蟹江敬三扮する星人が登場したり(第50話)するシーンがあるほか、「竜沢寺橋」やいちょう並木の風景も確認できる。
ちなみに、竜沢寺という名の寺は成城に存在せず(そもそも成城に墓地はない)、どなたに訊いてもその橋名の由来は不明。ここも多くのドラマに登場するので、次回詳しくご紹介したい。
(註1)当質店は、力道山や猪木寛至(のちのアントニオ猪木)も出演したプロレス・ドラマ「チャンピオン太」(62〜63年/CX系)で、その建物が見られるという方もいる。力道山から、役名の‶死神酋長〟をリングネームにさせられそうになった猪木は、必死に抵抗したという。
(註2)第1話から6話までを演出したのは、旧制成城高等学校卒の映画監督・富本壮吉。父君は人間国宝の陶芸家・富本憲吉で、成城から祖師谷に通じる高台に窯を持っていた。
(註3)この坂道を降り切ったところに、「気になる嫁さん」で榊原るみが嫁ぐ清水家があった。
高田 雅彦(たかだ まさひこ)
1955年1月、山形市生まれ。生家が東宝映画封切館の株主だったことから、幼少時より東宝作品に親しむ。黒澤映画、クレージー映画、特撮作品には特に熱中。三船敏郎と植木等、ゴジラが三大アイドルとなる。東宝撮影所が近いという理由で選んだ成城大卒業後は、成城学園に勤務。ライフワークとして、東宝を中心とした日本映画研究を続ける。現在は、成城近辺の「ロケ地巡りツアー」講師や映画講座、映画文筆を中心に活動、クレージー・ソングの再現に注力するバンドマンでもある。著書に『成城映画散歩』(白桃書房)、『三船敏郎、この10本』(同)、『七人の侍 ロケ地の謎を探る』(アルファベータブックス)、近著として『今だから! 植木等』(同2022年1月刊)がある。