本作で登場する懐かしの成城の風景は、店舗では成城パンと鈴木金物店(『ニッポン無責任野郎』で植木等が店前を歌い歩く)、葡萄屋(宇津井健が自宅地下で経営していたレストラン)、吉田書店(『憲兵と幽霊』や『日本一のホラ吹き男』に登場)、成城大飯店(「帰ってきたウルトラマン」で榊原と団次郎が店先を歩く)、魚康(『サザエさんの結婚』で江利チエミが魚を買う)、石井食料品店(現在の成城石井)等々。建物では、成城プラザ(中華料理店「栄華飯店」正面に位置)に、前回も紹介した成城コンド(長男の山田吾一が冨士眞奈美と結婚して住むマンション)や竜沢寺橋など。
橋上駅舎だった頃の成城学園前駅の改札口とプラットホームが見られるのも貴重で、改札口は61年の丸山誠治監督『B・G物語 二十歳の設計』(星由里子が通りかかる)や、74年の神代辰巳監督『青春の蹉跌』(萩原健一が「斎太郎節」を歌いながら通過する)でも見られる。
ちなみに、続く石立鉄男の主演作「雑居時代」(73〜74年/大原麗子共演)も国分寺崖線上に位置する豪邸(成城三丁目14:今では某有名男女優夫妻の邸宅が建つ)が舞台となっていたことから、成城の商店街やいちょう並木、明正小学校(成城唯一の公立小学校:杉田かおるが通う設定)の風景が登場する。
TBSが大映テレビと手を組んで作ったのが「赤いシリーズ」。‶激情型サスペンス・メロドラマ〟の名に相応しい異様な世界観や、宇津井健の大袈裟なセリフ回しにハマった方も多かろう。特に、増村保造監督の手による「赤い激突」での宇津井(大谷バレースクール主宰)は、神がかっていたとしか言いようがない。そして、その第1弾「赤い迷路」(74~75年)もまた、立派な〈成城ロケ作品〉である。
精神科医の宇津井が妻殺しの犯人を捜すうちに、娘の山口百恵の出生の秘密に触れてしまう、という劇的な展開を見せる本作。第1話から早速、仙川に架かる竜沢寺橋(りゅうたくじばし)の上で宇津井と山口の父娘が会話を交わす。
「気になる嫁さん」で石立や山本紀彦が愉快なやり取りを繰り広げるこの橋の袂では、「太陽にほえろ!」(72〜86年/NTV系)の一作目で萩原健一扮する‶マカロニ〟刑事が必死の張り込みを行う。『華麗なる闘い』(69年)という映画では、ヒロイン・内藤洋子の家が橋の北側にある住宅に設定されていて、内藤を車で送ってくる‶ボンボン〟を成城大卒かつ成城在住の田村正和が演じている。