ショーケンの出世作「太陽にほえろ!」は国際放映(旧新東宝撮影所=現在のメディアシティ)で撮影されていたことから、七曲署(外観は上用賀で撮影)の刑事たちはしばしば成城や祖師谷の街に現れる。とりわけ砧の路上や住宅地、商店街でのロケが多く、殿下(小野寺昭)やボギー(世良公則)が住む螺旋階段のあるアパートは、砧四丁目12にあった「かおる荘」で撮影。聞き込みは富士見公園横の「富士見荘」が定番だった。カーチェイスはよく砧の高台の路上が使われ、植木等邸の前でもロケが行われている。
意外なのは、渥美清の「泣いてたまるか」(66〜68年/TBS系)で成城の街並みが登場すること。『サザエさん』シリーズでも度々ロケに使われた下町情緒を醸す成城の商店街は、ここでも効果抜群であった。歌から発想された「恋人も濡れる街角 URBAN LOVE STORY」(88年/NTV系)でも中村雅俊が成城に現れるとのことだが、筆者は未見。雅俊さんが成城に住まわれるきっかけは、このドラマだったのだろうか。
成城学園OGの紀比呂子さんに伺ったところでは、主演した「アテンションプリーズ」(70~71年/TBS系)で成城ロケの経験があるそうだし、夏木陽介さんによれば、学園ドラマ「青春とはなんだ」(65~66年/NTV系)のラグビー練習シーンは、成城大学のグラウンドで撮影したこともあったという。当時のお住まいは成城学園の高等学校前にあり、同学園出身の西條康彦さんはよく夏木邸に遊びに行ったとのことだ。
テレビドラマ篇は、フジテレビ開局記念番組「少年ジェット」(59〜60年)で締めくくろう。主人公のジェットが成城の不動橋をバイクで駆け抜けるシーンがあることは、以前紹介したとおり。驚くべきは、北村健(タケシ)が開設する「少年ジェット探偵事務所」が富士見橋の東脇(現在の地番は「成城三丁目8」。藤田進が居住していたこともある)に位置していたことである。ジェットは愛車・ラビット号に跨り、この橋を渡って警視庁や事件現場へと向かっていく。
さらに、ジェットと‶怪盗〟ブラックデビルが対決するのが『ニッポン無責任時代』(62年)でハナ肇扮する氏家社長邸として使われた旧中村邸の門前(‶成城名物〟の鉄塔・川世線がそびえる)だったり、「ハリケーン博士」の回に登場する美少女・カンナ(若き日の和泉雅子)が監禁されるアジトとして〈成城239番地〉の邸宅が使われていたりと、当ドラマもまさに‶成城メイド〟のテレビドラマなのであった。
高田 雅彦(たかだ まさひこ)
1955年1月、山形市生まれ。生家が東宝映画封切館の株主だったことから、幼少時より東宝作品に親しむ。黒澤映画、クレージー映画、特撮作品には特に熱中。三船敏郎と植木等、ゴジラが三大アイドルとなる。東宝撮影所が近いという理由で選んだ成城大卒業後は、成城学園に勤務。ライフワークとして、東宝を中心とした日本映画研究を続ける。現在は、成城近辺の「ロケ地巡りツアー」講師や映画講座、映画文筆を中心に活動、クレージー・ソングの再現に注力するバンドマンでもある。著書に『成城映画散歩』(白桃書房)、『三船敏郎、この10本』(同)、『七人の侍 ロケ地の謎を探る』(アルファベータブックス)、近著として『今だから! 植木等』(同2022年1月刊)がある。