—老体からは逃げられない。でも笑い飛ばすことは出来る—
萩原 朔美さんは1946年生まれ、11月14日で紛れもなく77歳を迎えた。喜寿、なのである。本誌「スマホ散歩」でお馴染みだが、歴としたアーチストであり、映像作家であり、演出家であり、学校の先生もやり、前橋文学館の館長であり、時として俳優にもなるエッセイストなのである。多能にして多才のサクミさんの喜寿からの日常をご報告いただく、連載エッセイ。同輩たちよ、ぼーッとしちゃいられません!
連載 第12回 キジュからの現場報告
何年間も、渡り鳥のように前橋、世田谷、那須、箱根と4ヶ所をぐるぐる回遊しながらの生活を続けていると、車中の過ごしかたが大事になってきた。頻繁に乗る湘南新宿ラインは、2時間以上かかる。
最初は、車中の光の移動が面白くなって、やたらと撮影。
次が、停車駅の駅前に何があるかを観察。後日、「駅前の樹」とか、「駅降りて最初に見る言葉」とか、「駅前の銅像」とかの撮影ポイント探しで忙しくなった。
その次にイヤホンで歌を聴きまくり。お陰で最近の流行に詳しくなった。(笑)
で、最近は原稿書き。これが案外快調だ。今や、全ての原稿は車中の携帯で書いている。この原稿もそうだ。
移動する書斎は、窓の風景が変化するから楽しい。リズミカルに揺れるから、文章もリズミカル!?にはいかないか。(笑)
ただ一つの難点は、字が小さい。(笑)これが読めなくなったら、私の渡り鳥生活も終わりをむかえるかも知れない。あっ!今電車が止まった。これは大幅に到着が遅れるな。こうなると、文章書も先に進まなくなるから不思議なのだ。(笑)
第11回 77年余、最大の激痛に耐えながら
第10回 心はかじかまない
第 9 回 夜中の頻尿脱出
第8回 芝居はボケ防止になるという話
第7回 喜寿の幕開けは耳鳴りだった
第 6 回 認知症になるはずがない
第 5 回 喜寿の新人役者の修行とは
第4回 気がつけば置いてけぼり
第3回 片目の創造力
第2回 私という現象から脱出する
第1回 今日を退屈したら、未来を退屈すること
はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長、金沢美術工芸大学客員教授、前橋市文化活動戦略顧問を務める。 2022年に、版画、写真、アーティストブックなどほぼ全ての作品が世田谷美術館に収蔵された。