24.05.30 update

第13回【私を映画に連れてって!】 岩井俊二、行定勲、堤幸彦、篠原哲雄、北村龍平、望月六郎、飯田譲治の7人の監督の短編映画集『Jam Films』でショートフィルム革命!

1981年にフジテレビジョンに入社後、編成局映画部に配属され「ゴールデン洋画劇場」を担当することになった河井真也さん。そこから河井さんの映画人生が始まった。
『南極物語』での製作デスクを皮切りに、『私をスキーに連れてって』『Love Letter』『スワロウテイル』『リング』『らせん』『愛のむきだし』など多くの作品にプロデューサーとして携わり、劇場「シネスイッチ」を立ち上げ、『ニュー・シネマ・パラダイス』という大ヒット作品も誕生させた。
テレビ局社員として映画と格闘し、数々の〝夢〟と〝奇跡〟の瞬間も体験した河井さん。
この、連載は映画と人生を共にしたテレビ局社員の汗と涙、愛と夢が詰まった感動の一大青春巨編である。

 それまで僕が関わる映画=長編映画だった。

 1999年に、友人でもあり、プロデューサーと俳優の関係で一緒に『波の数だけ抱きしめて』(1991)等の映画を一緒にやった別所哲也さんが発起人(現在は主宰)で「アメリカン・ショートショートフィルムフェスティバル」を原宿でスタートさせた。彼とは僕がフジテレビで担当していたアカデミー賞の放送などでも一緒に仕事をした。

 そういう関係もあり、第3回の映画祭(2001)の審査員を依頼され、殆ど短編映画には造詣はなかったが、同じ審査員として小錦さん、天海祐希さん、村上龍さん……と聞いて一応僕は映画の人間だし、と受けてみた。1人だけプロと言えるアカデミー賞の短編部門受賞監督の伊比恵子さんがいた。計5人だ。

 カンヌ国際映画祭短編部門のパルムドール受賞『おはぎ』(デービッド・グリーンスパン監督)も特別上映されたりして、審査員としても多くの短編映画を観ることが出来た。世界中の作品を観て、ドイツやオーストラリア、アラビア語の映画もあり、どれも面白かった。ただ、残念ながら、日本の作品は世界に比べると物足りなかった。当時は配信の時代でも無く、なかなか短編映画を作っても日本で観てもらえる機会は少なかったことも影響していたと思う。

 原宿の会場で、別所哲也さんと、『らせん』(1998)、『アナザヘヴン』(2000)を一緒に創った飯田譲治監督と3人で話しながらそんな話になった時、別所さんから「何とか面白い短編映画を創って下さいよ……」的な会話になり、僕は適任では無いと言った記憶があるが、飯田監督は「短編は面白いよ!」となった。長編の話しかしたことが無かったので、ちょっと意外な気もしたが、そうなんだと他の監督にも聞いてみることにした。

 岩井俊二監督に話をすると「良いですね」となり、行定勲監督は、会うといきなり「賞を取るならこんなストーリーはどうか、エンタテインメント作品なら、自分が高校時代に体験した体育の授業での【ブルマ】の話とか……」。【ブルマ】で行こう! となった。

『VERSUS―ヴァーサス―』(2000)という、ほぼ自主映画だが、とても面白く、過去に大阪から東京に僕を訪ねて来てくれた北村龍平監督も即決。コメディ映画を期待して堤幸彦監督、『月とキャベツ』(1996)が大好きだった篠原哲雄監督、エロティックな作品を期待して『皆月』(1999)の望月六郎監督。そして最初に話をした飯田譲治監督の7人にした。8人に声をかけてみて『きらきらひかる』(1992)で一緒だった松岡錠司監督以外は、とても前向きだった。むしろ松岡監督の「今は、短編映画は……」という答えが多いと考えていた。
 そんな流れで、地味と思われていた短編映画だが、僕ではエンタテインメント作品を目指した。

▲2002年公開の『Jam Films』は、筆者企画・発案の日本初の本格的な短編映画企画で、7人の監督によるショートフィルムを集めた日本映画のオムニバス・シリーズ。『あずみ』『天間荘の三姉妹』の北村龍平、『木曜組曲』『ハピネス』の篠原哲雄、『らせん』『ドラゴンヘッド』の飯田譲治、『皆月』『新・悲しきヒットマン』の望月六郎、『天空の蜂』『真田十勇士』の堤幸彦、『GO』『リボルバー・リリー』の行定勲、『スワロウテイル』『キリエのうた』の岩井俊二と、映像の世界で注目されていた才能が集結した。また、7人の人気監督の映像テクニックを探るクリエイターズ・バイブルとも言える『ショートフィルム革命』も発行された。

1 2 3 4

映画は死なず

新着記事

  • 2024.12.03
    きわどい熟年女性の性愛表現から母の優しさまでフラン...

    『山逢いのホテルで』見どころ

  • 2024.12.03
    東京ステーションギャラリー「生誕120年 宮脇綾子...

    応募〆切: 1月20日(月)

  • 2024.12.02
    橋幸夫・舟木一夫・西郷輝彦・三田明の青春歌謡四天王...

    松竹青春歌謡映画のヒロイン 尾崎奈々

  • 2024.12.02
    大注目のボートレーサーが集結した「2025年 BO...

    応募〆切:12月20日(金)

  • 2024.11.28
    第5回【東宝映画スタア☆パレード】酒井和歌子&内藤...

    文=高田雅彦

  • 2024.11.28
    クリスタルキングが歌唱した「大都会」の唯一無二のハ...

    クリスタルキング「大都会」

  • 2024.11.27
    第55回【萩原朔美 スマホ散歩】いまどきのカバン考...

    見事な自己表現!

  • 2024.11.25
    クリスマス・イブに手塚治虫の歴史的名作が蘇る!映画...

    応募〆切:12月15日(日)

  • 2024.11.21
    「星影のワルツ」「北国の春」という2つの大ヒット曲...

    千昌夫「夕焼け雲」

  • 2024.11.20
    能登の子どもたちや被災者を、美しい音楽で励ましてく...

    被災者に勇気を与えるウイーン・フィルの活動

特集 special feature 

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!