24.05.30 update

第13回【私を映画に連れてって!】 岩井俊二、行定勲、堤幸彦、篠原哲雄、北村龍平、望月六郎、飯田譲治の7人の監督の短編映画集『Jam Films』でショートフィルム革命!

 セガもアミューズもヒットしたことによって、パート2を! という気運もあり考えた。

 元々、短編への造詣も乏しく、同じこともやりたくない。短編の原点とも言うべき、将来の長編監督を目指す、例えば助監督でも良いかもしれないし、業界外でも良いかもしれない、そういう人にチャンスを……。

 しかし、なかなか意見が纏まらず『Jam Films 2』と『Jam Films S』が同時並行で進む形になってしまう。

『Jam Films 2』(2004)のコンセプトは、映画業界外のPVの旗手などから監督を選んだ。小島淳二監督は<L’Arc~en~Ciel(ラルク アン シェル)>や<KIRINJI(キリンジ)>のPVや「ニュースステーション」のオープニングなどを手掛けていた。主演はラーメンズ。高橋栄樹監督は久保田利伸、GLAYなどのPVの旗手。韓英恵や麻生久美子さんに出演してもらった。丹下紘希監督は<Mr.Children(ミスター・チルドレン)>の多くのPVを手掛けていてトップランナーだった。井上秀憲監督は異色だったが、4人に新進の映画監督として音楽に拘った短編映画を創ってもらった。

 一方『Jam Films S』(2005)は『Jam Films』の7人の監督たちが推薦する「これから期待する人」を選んでもらった。助監督や、異業種からも。行定監督は手島領監督、岩井監督は原田大三郎監督、篠原監督は阿部雄一監督、北村監督は高津隆一監督、望月監督は石川均監督、堤監督は薗田賢次監督、飯田監督は浜本正機監督になった。藤木直人さんや内山理名さん、石原さとみさん、再び綾瀬はるかさんにも出演してもらった。

『Jam Films 2』『Jam Films S』で監督をしてもらった人は、その後各分野で活躍中である。

 しかし、やや実験的な要素が大きく、元々、エンタテインメント作品を目指していたパート1と比較すると、観客も戸惑ったのではないか。実際に、興行も芳しく無かった。やはり、実験的な短編に、長編と同じ料金で観に来てもらうのはとてもハードルが高いことは学習できたと思う。

 3回やってみて、このコンセプトでの継続は難しくなった。ただ、何か短編で、ある程度の商業性を持つ映画製作は無いかと色々考えてみた。

▲出演者はナレーションも兼ねる広末涼子1人で、撮影、照明などスタッフも岩井俊二監督ほぼ1人という、マン・ツー・マンで撮られた『ARITA』。少女漫画チックな物語を、CG駆使の技で見せる〝リリカル・ホラー〟といった作品。他の監督の作品も紹介しておくと、北村龍平監督『the messenger-弔いは夜の果てで-』は北村一輝らの出演による、アクションホラー作品。篠原哲雄監督『けん玉』は、『月とキャベツ』以来6年ぶりの山崎まさよしとのタッグで、倦怠期のカップルをめぐるラブロマンス。篠原涼子も出演。望月六郎監督『Pandora-Hong Kong Leg-』は、『皆月』で組んだ吉本多香美を再び主演に迎え、〝水虫〟をテーマにしながらも、エロティックなファンタジーの仕上がり。堤幸彦監督『HIJIKI』は、悲劇と喜劇が何度も入れ替わる佐々木蔵之介、秋山菜津子出演のブラックコメディ。7人7様のテイストがぎっしりと凝縮されているところが、短編映画の醍醐味であろう。『Jam Films 2』は2004年の公開で、小島淳二監督『Japan culture lab./机上の空論』(ラーメンズ、市川実日子、斉木しげる出演)、高橋栄樹監督『CLEAN ROOM』(韓英恵、麻生久美子、手塚眞出演)、井上秀憲監督『HOOPS MEN SOUL』(須賀貴匡、大森南朋、杉本彩出演)、丹下紘希監督『FASTENER』(有岡大貴、嶋田久作出演)の4作のオムニバス。2005年公開『Jam Films S』は、薗田賢次監督『Tuesday』(ZEEBRA、岩堀せり出演)、高津隆一監督『HEAVEN SENT』(遠藤憲一、乙葉出演)、石川均監督『ブラウス』(小雪、大杉漣出演)、手島領監督『NEW HORIZON』(綾瀬はるか出演)、阿部雄一監督『すべり台』(石原さとみ、柄本時生、山崎まさよし出演)、原田大三郎監督『a』(内山理名、スネオヘアー出演)、浜本正機監督『スーツ-suit-』(藤木直人、小西真奈美、濱田マリ出演)と、7種類の豪華な料理が1枚の皿に盛られたワンプレート・ディッシュをいただいているような感覚だ。

1 2 3 4

新着記事

  • 2025.04.11
    映画『世界の中心で、愛を叫ぶ』でのみずみすしい演技...

    公演:東京、大阪、新潟、長野

  • 2025.04.10
    昭和43年に大ヒットしたヴィレッジ・シンガーズ「亜...

    ヴィレッジ・シンガーズ「亜麻色の髪の乙女」

  • 2025.04.09
    東京国際音楽祭2025「昭和100年軽音楽の歴史」...

    5月3日~5日

  • 2025.04.09
    〈昭和の日〉にアナログレコード専門店「Face R...

    昭和の日(4月29日)

  • 2025.04.09
    純金約20kgで7億2,600万円相当の「昭和百年...

    4月16日(水)~21日(月)

  • 2025.04.08
    〈ロマンスカーミュージアム〉が4周年!鉄道ファン垂...

    4月16日~5月6日

  • 2025.04.08
    ドキュメンタリー『わたしのまち、応答セヨ』の舞台と...

    応募〆切:5月9日(金)

  • 2025.04.08
    昭和歌謡のレジェンド、山本リンダ、平山みきらによる...

    5月5日(ゴーゴーダンスの日)

  • 2025.04.04
    【お出かけ情報】昭和100年記念イベント!催事場だ...

    4月25日~5月8日

  • 2025.04.04
    【お出かけ情報】復元工事が進む沖縄の象徴・首里城が...

    4月25日~5月11日

映画は死なず

特集 special feature  »

<特集>今、時代劇が熱い! 第三弾 主演北大路欣也が語る「三屋清左衛門残日録」~時代劇にはまだまだ未来がある~

特集 <特集>今、時代劇が熱い! 第三弾 主演北大路欣也が...

藤沢周平原作時代劇「三屋清左衛門残目録」の章

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!