24.07.31 update

第15回 【私を映画に連れてって!】史上初!映画とドラマ同時公開の『アナザヘヴン』と、フジテレビにいた立場ながら制作をまかされたテレビ朝日の連ドラ「スカイハイ」。映画とは?ドラマとは?

 結局、思いつかずに制作発表を迎えた。釈由美子プラス衣装(着物)の出来、見栄えが素晴らしく、スポーツ紙等は取り上げてくれるだろう。それでも10話を通して引き付ける何かが欲しい。

 釈さんは僕にはない霊感があり、見える時があるという。オカルトやホラードラマではないのであまり強調することはなかったのだが、突如、閃いて? しまう。

 その時の行動は自分ではあまり覚えていないのだが、釈さんや北村龍平監督ははっきり覚えていて、今でも言われたりする。

 毎回、ドラマのラスト付近で、主人公イズコが、相手の行き場所の選択によって「お行きなさい」或いは「お逝きなさい」と言う。原作通りだ。ただ、静かに、アクションも無く。目の前の釈さんと話しながら、この衣装でアクションをやるのが面白いのではと。『修羅雪姫』である。珍しく、自分でも演出側の気分になり、釈さんが{見えている}何かに向かって、大きくポーズをとり、指さして「お行きなさい!」と。水戸黄門の印籠の登場するシーンではないが、〝メリハリ〟が欲しいと思った。

 ノリの良いスタッフ、キャスト連だったので、その場で「これで行こう!」とのことになり、全話で「お逝きなさい!」が〆セリフになった。

 これが、うまくはまり、少し流行語のようになり、その後のテレビ朝日の釈由美子さん主演の連続ドラマ「7人の女弁護士」(2006/木曜21時)も、決め台詞が毎回ラスト前に登場。その後の木曜21時ドラマには決め台詞が何故か多くなった気もする。ドラマ自体はスタッフ、キャストがすべてやってくれるので、僕が最も貢献できたのはこのことだろうか。これはテレビ局にいたことの「ウケたい」習性でもあるかもしれない。

 1話目の視聴率は11.5%で予想を超える反響があった。全体を通しても9%台をキープし、パート2のオファーがあった。1年後、「PART2」がスタートする。ただ、僕はほとんど関わらなかった。パート1を超える視聴率、平均9.9%を獲った。

『リング』『らせん』の時の心境に近いのかもしれないが、世の中に最初に発信することに興味、好奇心が強いのだろう。PART1が終わって、釈由美子さんから「これは私の代表作です!」と言ってもらった時に、出演してもらった彼女との巡りあわせに感謝するとともに、僕の役目は終わった気がした。映画にもなったが、それは次のクリエイター達に頑張ってほしい気持ちになった。

 ただ、高橋ツトムさんの傑作コミック『鉄腕ガール』の映画化など幾つかトライしながら、実現できていないのが残念というか、心苦しいところである。だから未だに、映画製作に拘って生きて行けているのかもしれないが。

▲2003年3月1日、ドラマ「スカイハイ」クランクアップを迎え、東映大泉撮影所内での「怨みの門」のセットの前で全員集合。4段目の中央、眼鏡をかけているのが筆者。


かわい しんや
1981年慶應義塾大学法学部卒業後、フジテレビジョンに入社。『南極物語』で製作デスク。『チ・ン・ピ・ラ』などで製作補。1987年、『私をスキーに連れてって』でプロデューサーデビューし、ホイチョイムービー3部作をプロデュースする。1987年12月に邦画と洋画を交互に公開する劇場「シネスイッチ銀座」を設立する。『木村家の人びと』(1988)をスタートに7本の邦画の製作と『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989)などの単館ヒット作を送り出す。また、自らの入院体験談を映画化した『病院へ行こう』(1990)『病は気から〜病院へ行こう2』(1992)を製作。岩井俊二監督の長編デビュー映画『Love Letter』(1995)から『スワロウテイル』(1996)などをプロデュースする。『リング』『らせん』(1998)などのメジャー作品から、カンヌ国際映画祭コンペティション監督賞を受賞したエドワード・ヤン監督の『ヤンヤン 夏の想い出』(2000)、短編プロジェクトの『Jam Films』(2002)シリーズをはじめ、数多くの映画を手がける。他に、ベルリン映画祭カリガリ賞・国際批評家連盟賞を受賞した『愛のむきだし』(2009)、ドキュメンタリー映画『SOUL RED 松田優作』(2009)、などがある。2002年より「函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞」の審査員。2012年「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」長編部門審査委員長、2018年より「AIYFF アジア国際青少年映画祭」(韓国・中国・日本)の審査員、芸術監督などを務めている。また、武蔵野美術大学造形構想学部映像学科で客員教授を務めている。

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映画は死なず

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