東宝のスクリーンにその姿を見せたのは、ドリフの方が先となる。『クレージー黄金作戦』(67年)で、ラスベガスのショウ場面の演出を担った和田嘉訓監督による『ドリフターズですよ! 前進前進また前進』は、同年10月の公開。『クレージーの怪盗ジバコ』の併映作であったことからも、渡辺プロの安定志向が見て取れる。
ドリフの面々は、‶踊る指揮者〟スマイリー小原が親分を務めるヤクザ組織の一員。組が解散してしまったことから、「何でもコンサルタント」業を始める。そんな中、押し付けられたヤクザ者の死体(天本英世!)の処理に困り果て、いかりやが自首しようとする「城西警察」は、旧成城警察署で撮影されている。当署は、新東宝映画『殺人犯 七つの顔』(59年:三輪彰監督)や、久松静児監督作『早乙女家の娘たち』(62年)でもロケ地となっているが、管轄が広くて手狭になったか、現在では環状八号線沿いに移転している。
近くの小田急線踏切(今は高架化されたので存在しない)を、ロマンスカー3100型(ミュージックホーン=非常警笛音を発する)が走り抜けていく姿も懐かしい(註2)。
さらに、ヤクザ組織に関わりを持つ代議士・藤田まことの事務所は、成城に今も残る洋館「龍野邸」でロケされている。当館は『へそくり社長』(56年)で森繁社長の自宅ロケにも使われた趣きのある洋館(註3)で、古くは『青春の気流』(42年)から『ラッキーさん』(52年)、『兄さんの愛情』(54年)、『明日の幸福』(55年)、『現代サラリーマン 恋愛武士道』(60年)、『B・G物語 二十才の設計』(61年)などで度々使用された、成城を象徴する撮影スポット。その後も、北大路欣也・星由里子主演の『北穂高絶唱』(68年)に登場したほか、「ウルトラQ」(66年/TBS系)では一の谷研究所の外観として使われている(註4)。
のちに公開されるシリーズ作と比べると、本作は音楽的にも(予算面でも)非常に充実した内容で、死体処理のドタバタ劇も痛快。酒井和歌子、松本めぐみ、大原麗子(歌まで歌う!)など女優陣の充実や、ザ・タイガースの演奏シーンなど、見どころ(笑いどころ)の多い一作となっている。