翌1968年4月公開の『ドリフターズですよ! 盗って盗って盗りまくれ』は、松竹の渡辺祐介が監督したシリーズ第二作(註5)。泥棒修行をテーマとし、松竹らしい人情喜劇の味と宮川泰による洗練された音楽が絶妙にマッチした本作でも、成城の風景が目に飛び込んでくる。加藤茶扮するチョロがふいに飛び込む店は、成城北口商店街にある葬儀店「佐久間本店」(註6)。主人として登場するのは、またもやスマイリー小原。このミスマッチ感に愉悦を覚えるのは、六十代以上の方に違いなかろう。
いわゆるドタバタ喜劇にもかかわらず、渡辺監督の丁寧な演出により、それなりの完成度を見せた本作。渡辺監督は以後、松竹で『全員集合!!』シリーズのほとんどの作品を手がけることになるが、以降の東宝ドリフものに、この丁寧さがなくなってしまうのは大変残念なことだった。山小屋に住む盲目の少女・酒井和歌子と心優しき泥棒集団・ドリフのやり取りも、清純さ悪の対比が効いていて、なかなか感動的。黒澤明ではないが、ここは『山小屋の五悪人』とタイトルをつけたかったところだ。
人気絶頂のコント55号の姿をスクリーンで見られるようになったのは、1968年11月公開の『コント55号 世紀の大弱点』から。監督はドリフ映画第一作と同じ和田嘉訓(註7)。ザ・タイガースも含め、人気グループの主演映画第一作をすべて手がけたことが、和田監督にとって幸運だったのかはともかく、この時代を象徴するタレントを生き生きとフィルムに焼き付けた功績は大きい。
本作、脚本が『ニッポン無責任時代』などを手がけた(ことになっている)松木ひろしだったことからか、まるで植木等が歌いそうな主題歌「そいつに一番弱いんだ」を、二郎さんが大蔵団地の坂道で歌い踊るところからスタート。欽ちゃんは、歌には参加せず、女の子に追いかけられるのみ。サディスティックで<体技に優れた>欽ちゃんと、ひたすら苛め抜かれる<歌の上手い>二郎さんの対比が、映画に反映されているのは当然のことである。