22.12.27 update

第22回 【成城シネマトリビア】 祖師ヶ谷大蔵、千歳船橋で撮られた映画  

東宝スタジオ内を流れる仙川 撮影:神田亨

 成城と祖師谷を区分するのが仙川である。小金井市に端を発し、武蔵野市、三鷹市を経て世田谷区に入るこの川、護岸工事完了前はよく氾濫し、狩野川台風(58年)時の三船敏郎の救出劇はよく知られる。
 そんな仙川近辺で撮られた映画に、『慟哭』(52年:佐分利信監督)、『鋼鉄の巨人 地球滅亡寸前』(57年:石井輝男監督)、『スーパージャイアンツ 宇宙怪人出現』(58年)、『クレージー作戦 くたばれ!無責任』(63年)、『ひばり チエミ いづみ 三人よれば』(64年)、『華麗なる闘い』(69年)などがあるが、やはり新東宝と東宝の作品ばかりだ。

 仙川の東にあった旧成城警察署脇の踏切が見られる映画に、坂本九主演の音楽映画『アワモリ君乾杯!』(61年:古澤憲吾監督)や三橋達也のスパイ・アクション『国際秘密警察 火薬の樽』(64年:坪島孝監督)があることは先述のとおり。当踏切が「ウルトラQ」の最終話「あけてくれ!」(67年の再放送で初公開:円谷一監督)で、佐原健二の万城目淳がスポーツカーを停める場所であることは、ご存知だろうか。 
 踏切近くにあったレストラン「煉瓦屋」が登場するのが、『さよなら、こんにちは』(90年:福田陽一郎監督)という恋愛コメディ映画。主演の南果歩はのちにこの近くにお住まいになるので、当時から砧の街がお気に召していたのであろう。 
 ここを南下した荒玉水道道路沿いにあったのが新東宝撮影所である。現在では敷地の約半分が日本大学商学部キャンパス(註1)になってしまっているが、当撮影所を舞台にした映画も存在する。
 いわゆる‶バックステージもの〟の『スター毒殺事件』(58年:赤坂長義監督)では、天知茂や万里昌代が別名の俳優に扮し、ステージ内外でどろどろの復讐劇が展開されていく。中山昭二や古川ロッパが本人役で出てくるのはご愛敬だが、映画人が仲間を殺していくという内容は、大蔵貢くらいしか思いつかない企画であろう。

 ちなみに、本作で病院として登場するのが、門前に椰子の樹があった新東宝第二撮影所。かつて東宝第三撮影所だった当施設は、新東宝、富士映画、大蔵映画の撮影所を経て、やがてレジャー施設「オークラランド」へと姿を変える。

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