人生百年時代――とはいえ、老いさらばえて100歳を迎えたくはない。
健康で生気みなぎるような日々を過ごせてこそ、ナイス・エイジングだ!
西洋医学だけでなく東洋医学、ホメオパシー、代替医療まで、
人間を丸ごととらえるホリスティック医学でガン治療を諦めない医師、
帯津良一の養生訓は、「こころの深奥に〝ときめき〟あれ」と説く。
帯津良一・86歳のときめき健康法
文=帯津良一
調べ物のために昔の映画雑誌の頁(ページ)をめくっていたら、
「1930年代の名花(めいか)たち」
という頁に行き当たったのである。
その瞬間、若き日のキャサリン・ヘプバーンの顔が迫ってきた。すごい色気である。ほかにマーナ・ロイとかラナ・ターナーなど数人の顔も並んでいたが、こちらはまったく迫力がない。その他大勢である。
キャサリン・ヘプバーンの色気の根元は何処に? それはすぐにわかった。鼻の孔(あな)、すなわち解剖学用語でいう外鼻孔(がいびこう)にあったのだ。解剖学用語では鼻のことを外鼻という。そして外鼻は鼻根(びこん)、鼻背(びはい)、鼻尖(びせん)、鼻翼(びよく)、外鼻孔から成り、鼻尖、鼻翼、外鼻孔によって鼻の孔ができ上るのである。
つまり、鼻の孔といえば外鼻孔のことなのであるが、鼻翼と鼻尖が大きく影響を与えているのである。
これまでも多くの女優さんの外鼻孔に色気を感じて来た。まずはジェーン・ラッセル。代表作といえば、
『紳士は金髪がお好き』(53年、アメリカ)
か。監督はハワード・ホークス。主演はマリリン・モンロー。ジェーン・ラッセル、チャールズ・コバーン。
世間の注目は圧倒的にマリリン・モンローだったが、私の関心はジェーン・ラッセルだった。あの抓(つま)まれたような鼻に色気を感じたのだ。近所の額縁店の店頭にあった彼女の額入りのブロマイドを買って来て、わが勉強机の上に飾ったのだから。
「病(やまい)膏肓(こうこう)に入る」
とはこのことだ。家族の者は鼻の孔の色気なんて思いも及ばないから、ただ、にこにこしながら眺めている。私はほくそ笑みながら一人で悦に入っていたものである。
次なるは、どうしてもソフィア・ローレンにご登場願わなくてはならない。初対面の映画が何であったか忘れてしまったが、彼女の野性的な色気には圧倒されたものである。彼女の色気の代表作といえば、
『河の女』(55年、イタリア)
だろう。監督はマリオ・ソルダーティ。主演はソフィア・ローレン、ジェラール・ウーリー、リック・バッタリア。主題歌のマンボ・バカンもよかった。外鼻孔は端正な長方形だ。
それにしても、色気の根元は外鼻孔であって、どうしても目や口ではないのだろう。目や口も色気と決して無縁ではないが、外鼻孔のそれに及ばないのは目と口は二次元なのに外鼻孔は三次元だからではないのだろうか。要するに場(ば)のエネルギーに違いないのだ。
目は口ほどに物を言うというが鼻ほどではないのだ。コロナ禍のマスクが世の中から女性の色気を奪い去ってしまったことが自然免疫の低下をもたらしたような気がしてならない。元気を出すために、『旅情』のDVDを観てキャサリンに会ってみることにした。
おびつ りょういち
1936年埼玉県川越市生まれ。東京大学医学部卒業、医学博士。東京大学医学部第三外科に入局し、その後、都立駒込病院外科医長などを経て、1982年、埼玉県川越市に帯津三敬病院を設立。そして2004年には、池袋に統合医学の拠点、帯津三敬塾クリニックを開設現在に至る。日本ホリスティック医学協会名誉会長、日本ホメオパシー医学会理事長著書も「代替療法はなぜ効くのか?」「健康問答」「ホリスティック養生訓」など多数あり。その数は100冊を超える。現在も全国で講演活動を行っている。講演スケジュールなどは、https://www.obitsusankei.or.jp/をご覧ください。