23.05.04 update

【わが昭和歌謡はドーナツ盤】アキラとルリ子の名コンビによる日活映画「渡り鳥」シリーズのラストシーンを盛り上げた見事な主題歌 小林旭「ギターを持った渡り鳥」

 蔵原惟膳監督映画『爆薬(ダイナマイト)に火をつけろ』で歌った「ダイナマイトが百五十屯」がヒットし、旭には〝マイトガイ〟の称号が贈られた。ちなみに裕ちゃんは〝タフガイ〟、二谷英明は〝ダンプガイ〟、赤木圭一郎は〝クールガイ〟、和田浩治は〝やんちゃガイ〟だった。

 映画俳優として年間10本以上、最高年間13本に主演という日活プログラム・ピクチャーの過酷なスケジュールを背負っていたにも関わらず、歌手としても「流れ者」シリーズの一篇である60年の映画『南海の狼煙』の主題歌「さすらい」をヒットさせ、61年には、寮歌だった「北帰行」を歌謡曲としてヒットさせるなど、歌謡界においてもスターだった。

 小林旭は、64年にクラウンレコードへ移籍する。その年にリリースされたのが「恋の山手線」「自動車ショー歌」といった、コミックソングともいえる楽曲で、これも歌手・小林旭の持ち味だった。アキラのファンを公言する東京スカパラダイスオーケストラと一緒に、平成のテレビ番組でセッションしていたが、改めて小林旭の音楽性の幅広さに驚かされた。95年にリリースした「アキラのジーンときちゃうぜ」の編曲は、東京スカパラダイスオーケストラによるものである。

 70年に「ついて来るかい」、71年に「ごめんね」「純子」をヒットさせ、演歌のジャンルにもその名を刻んだ。そして、75年にリリースした「昔の名前で出ています」が2年を経て大ヒットとなり、77年のNHK紅白歌合戦に初出場を果たした。初出場とは意外だったが、石原裕次郎しかり、歌がヒットしても映画俳優としては、日活映画全盛期には紅白出場なんて考えてもいなかったのではないだろうか。77年の初出場組には、ピンク・レディー、高田みづえ、ハイ・ファイ・セット、しばたはつみ、石川さゆり、狩人、清水健太郎、森田公一とトップギャラン、松崎しげるがいる。紅白には96年までに通算7回出場している。

 80年に、レコード会社をポリドールへ移籍する。85年には小林旭の大ファンだったという大滝詠一が書き下ろし、ジャズ・ピアニストで作曲家、編曲家の前田憲男(ストリングス・アレンジを担当)と共に編曲も担当、作詞は阿久悠が手がけた旭にぴったりのスケールの大きな楽曲「熱き心に」が大ヒットとなり、77年以来2度目の出場となる紅白歌合戦でも披露された。2002年には、大滝の企画・監修による4枚組のCDが発売されている。大滝詠一に限らず、小林旭より下の世代のミュージシャンたちとの仕事も多く、森田公一、谷村新司、宇崎竜童、大野克夫らも楽曲を提供している。記録によると、2018年までに158枚のシングルがリリースされている。2014年には、阿久悠作詞の「いとしいとしというこころ」を浅丘ルリ子とデュエットし、日活時代の名コンビが復活したようで、テレビで歌っている旭も、どこか嬉しそうに見えた。

 84歳となったマイトガイは、現在も現役で歌手活動を続けている。「ギターを持った渡り鳥」を聴くと、今でも暗闇の中で光彩を放つスクリーンに夢中になっていた昭和の映画館の匂いがよみがえり、アキラ、裕ちゃん、ルリ子、錦ちゃん、橋蔵、雷蔵、三船、若大将、岸惠子、若尾文子などなど、本物のスターたちが存在した時代に映画を観られた幸福感で心が満たされる。そして、映画の後に、父親に連れていかれた子供時代の屋台のラーメンの味が懐かしく思い出されるのである。

文=渋村 徹 イラスト:山﨑杉夫

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