23.07.06 update

少年隊もSMAPも嵐もKing & PrinceもSnow ManもSixTONESも、すべてはここから始まった ジャニーズ「太陽のあいつ」

 ジャニーズは1962年に結成されジャニーズ事務所から最初にデビューした4人組のグループで、真家ひろみ、飯野おさみ、中谷良、あおい輝彦からなる。残念ながら真家ひろみは故人。さすがのジャニーズファンでも若い世代には、知られていないかもしれないが、それでも現在も再演を重ね上演を続けている、ジャニーズ誕生を描き、その後に続くジャニーズ事務所のアイドルたちのヒットソングで構成する舞台『ABC座 ジャニーズ伝説』に映像出演していることで、あおい輝彦のことは知られているかもしれない。

 デビュー曲は、64年にリリースされた「若い涙」だった。この曲はNHKの上質な大人のバラエティ番組として人気があった「夢であいましょう」の〝今月の歌〟から生まれた楽曲で、64年8月の歌として紹介された。作詞は永六輔、作曲は中村八大、編曲は服部克久が手がけている。リコーダーで始まるイントロが印象的な行進曲のような楽曲で、〝おーいおいと呼んでみよう〟というフレーズは今でも記憶に残っている。

 メキシコのバンドであるロス・トレス・カバジェロスのラテンの大ヒット曲で、菅原洋一、布施明、グラシェラ・スサーナらも歌った「時計をとめて」は、66年にジャニーズもリリースし、コンサートの幕が下りた後、観客との別れを惜しむように、あおい輝彦がギターの弾き語りで歌い観客たちを感動させていた。King & Princeのメンバーだった平野紫耀にいたるまでジャニーズの定番の曲となっている。やはり66年にリリースされた浜口庫之助作詞・作曲の「涙くんさようなら」は、坂本九らとの競作(ジャニーズ以外のタイトルは「涙くんさよなら」だった)で、現在も多くの歌手によりカバーされ歌い継がれている昭和の名曲である。いずれも、舞台『ジャニーズ伝説』でも歌われている。

 そして、67年にリリースされた「太陽のあいつ」。TBSで放送された週刊誌の記者・カメラマンを主人公にした同名ドラマの主題歌で、主役を演じたのは矢吹渡という俳優。若い頃の黒沢年男を思わせるような爽やかなスポーツマンタイプの精悍な好青年というイメージを今でも憶えている。相手役は、人気アイドル恵とも子だった。ドラマはTBSと東宝の共同製作ということもあり、取材相手として宝田明、加山雄三、浜美枝ら東宝俳優や山本嘉次郎、古澤憲吾ら東宝の映画監督をはじめ、芸能・スポーツ界のスターが実名でゲスト出演していた。第3話にはノンクレジットながら三船敏郎も出演している。ジャニーズのメンバーも、スタントマン志望の若者役で第9話に出演している。12話には、当時のGSブームを反映して、ザ・スパイダースがゲストだった。

 「太陽のあいつ」は、作詞・岩谷時子、作曲・いずみたくのヒットメーカー・コンビによる楽曲で、この曲を聴くと、映画スターたちがテレビドラマにも進出し、若手俳優たちによる多くの〝青春ドラマ〟が作られていた60年代のテレビが懐かしくよみがえってくる。芦川いづみ、鰐淵晴子、松原智恵子、内藤洋子らが主演していた「山のかなたに」「陽のあたる坂道」「あじさいの歌」「河のほとりで」「雨の中に消えて」「光る海」「あいつと私」などの石坂洋次郎作品、夏木陽介や竜雷太が熱血漢の教師を演じ、岡田可愛、土田早苗、松本めぐみ(後に加山雄三と結婚)、柏木由紀子らが女子高生を演じていた「青春とはなんだ」「これが青春だ」などなど、今一度観てみたい。80年代の初めには日本テレビの深夜枠で、「青春とはなんだ」や、石坂洋次郎原作、鰐淵晴子主演の「風と樹と空と」などは再放送されていたのだが。僕の小学生、中学生時代のテレビドラマである。高校生や大学生の青春に憧れがあった。懐かしさと同時に「太陽のあいつ」は、帰らざる日々という意味で、僕に切なさといった感情も浮かび上がらせる歌でもある。ちなみにB面の「焔のカーブ」の作詞は石原慎太郎だった。この曲は脚本石原慎太郎、北大路欣也主演のミュージカル『焔のカーブ』のテーマ曲で、ジャニーズも出演している。

1 2

映画は死なず

新着記事

  • 2024.05.20
    やっぱり懐かしい!映画『男はつらいよ』の世界にひた...

    京成電車下町さんぽ<2>

  • 2024.05.17
    町田市立国際版画美術館「幻想のフラヌール―版画家た...

    応募〆切:6月10日(月)

  • 2024.05.14
    阿木燿子作詞、宇崎竜童作曲の名曲を得て、自身初とな...

    ミュージシャンという肩書が似合うようになった

  • 2024.05.14
    全米の映画賞を席巻した話題作『ホールドオーバーズ ...

    応募〆切:6月5日(水)

  • 2024.05.14
    『あぶない刑事』の舘ひろし&柴田恭兵、70歳超コン...

    5月24日(金)公開

  • 2024.05.10
    背中トントン懐かしい ─萩原 朔美   

    第14回 キジュからの現場報告

  • 2024.05.10
    練馬区立美術館「三島喜美代─未来への記憶」展 観賞...

    応募〆切:5月31日(金)

  • 2024.05.10
    <特集>帰ってきた日本文化の粋 ─ 今、時代劇が熱...

    文=米谷紳之介

  • 2024.05.09
    吉田修一原作×大森立嗣監督が『湖の女たち』で再びタ...

    5月17日(金)全国公開

  • 2024.05.09
    東宝映画『ゴジラ』のヒロインに抜擢され、その後俳優...

    東宝から俳優座へ。

特集 special feature 

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

information »

ロマンスカーミュージアムが3周年記念イベントを開催!

イベント ロマンスカーミュージアムが3周年記念イベ...

4月10日(水)~5月27日(日)

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!