23.11.23 update

第20回日本レコード大賞で金賞ノミネート曲、亡き大橋純子「たそがれマイ・ラブ」は明治の文豪、森鷗外の小説『舞姫』から生まれた

 今年も多くの著名人が鬼籍に入られた。音楽界では「イエロー・マジック・オーケストラ」の高橋幸宏、坂本龍一、10月に入ってはシンガーソングライターの谷村新司、もんたよしのりと相次いだ。あとを追うように、もんたよしのりの訃報にコメントを寄せたばかりの大橋純子だったが、11月11日のニュースで帰らぬ人になったことを知った。(2日前の11月9日逝去)。昭和の音楽史に名を馳せた人たちの訃報は、輝いた星が消えていくようでなんとも寂しい限りだ。大橋の冥福を祈りながら、彼女が歌った「たそがれマイ・ラブ」がたまらなく聴きたくなった。

「たそがれマイ・ラブ」は、1978年8月5日にリリースされた10枚目のシングルである。作詞・阿久悠、作曲&編曲・筒美京平、昭和歌謡の黄金コンビによるものだ。もともとは、同年8月に放送されたTBS長編大作ドラマ「獅子のごとく」の主題歌として作られたものだった。ちょうど夏休みが終わるころで、両親と一緒に観た覚えがある。

  明治の文豪で軍医でもあった森鷗外のドイツ留学中の踊り子エリスとの恋愛や陸軍軍人で日露戦争の英雄、乃木希典との心の交流を描いたドラマだった。恋人のエリス役も含め約40人ものドイツ人俳優たちが出演。鷗外を演じた俳優・江守徹がドイツ人俳優と互角にやりあう会話力やスケールの大きさに圧倒された。やはり政府の命でベルリンに留学していた乃木希典を米倉斉加年が演じた。妻の静子に、「一緒に死んでくれないか……」という場面はしばらく忘れられなかった。感動冷めやらぬまま原作本『舞姫』を購入したが、短編ではあるが原文は読みづらく本棚に眠ってしまった。

 今改めてドラマの資料を見ると、当時のお金で制作費1億円、制作日数45日。東ドイツ政府の協力を得て、東西ドイツのロケを実現させた。脚本は佐々木守、今野勉による共同執筆で後にビデオ化もされた。江守徹、米倉斉加年をはじめ、丹波哲郎、緒形拳、泉谷しげる、十朱幸代、小山明子、岸本加世子、竹下景子らに加え、ナレーションは北村和夫という錚々たる出演陣だった。

 TBSは77年8月にテレビ史上初の3時間ドラマとして、明治の英傑、山本権兵衛の半生を軸にした「海は甦える」、78年3月には、伊藤博文とその妻・梅子を主人公にした「風が燃えた」、そして本作の「獅子のごとく」と放映、しかも日立グループの1社スポンサーだった。グループの名前が一覧に流れ、「この木なんの樹、気になる、気になる……」というCMソングは耳になじんでいった。ちなみに、作詞は伊藤アキラ、作曲は小林亜星だ。今では一社スポンサーではできないドラマだろう。

 さて本題にもどると、鷗外が初めて手掛けた自伝的小説『舞姫』のモデルというべきエリスの心情が推し量れるのが阿久悠が作詞した「たそがれマイ・ラブ」だ。

1 2

映画は死なず

新着記事

  • 2024.06.21
    『ぐるりのこと。』『恋人たち』の橋口亮輔監督の9年...

    7月12日(金)全国公開

  • 2024.06.21
    新しい朝が来た、希望の朝だ ♪─萩原 朔美の日々 ...

    第17回 キジュからの現場報告

  • 2024.06.20
    明石家さんま&大竹しのぶ初共演の人気ドラマ「男女7...

    「男女7人夏物語」の主題歌

  • 2024.06.14
    創建1200年記念 特別展「神護寺─空海と真言密教...

    応募〆切:7月15日(月)

  • 2024.06.14
    実話をもとに描かれた、海の男たちの誇りと絆の戦争秘...

    応募〆切:6月25日(火)

  • 2024.06.14
    自然写真家・今森光彦のライフワークの集大成、「今森...

    6月20日(木)~9月29日(日)

  • 2024.06.13
    三浦友和&山口百恵の二人を結んだ楽曲?! 松崎しげ...

    「愛の微笑み」から改題された

  • 2024.06.11
    マニフレックス公式HPの人気連載記事『暮らしのエッ...

    6月28日(金)~30日(日)

  • 2024.06.11
    田中邦衛、山本圭、加藤剛らが出演した社会派ドラマ「...

    日本を代表する彫刻家・佐藤忠良を父にもつ

  • 2024.06.10
    韓国500万人超えの大ヒットした、予測不能の海洋ク...

    応募〆切:7月10日(水)

特集 special feature 

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!