24.03.28 update

「しあわせになりたいなぁ」と呟くように歌唱する、国民的演歌歌手・都はるみの「しあわせ岬」を聴きながら彼女自身の有為転変を想う

シリーズ/わが昭和歌謡はドーナツ盤

〝睡眠は最高のアンチエイジング〟と言われるが、年を重ねると覚醒が早くなり、物音にも動じず眠る幼子のような睡眠はなかなかとることができない。朝かと思えば、まだ夜中の2時。もう一度目が覚めればまだ3時半。もうひと眠りしたいところだが、この頃は枕元のリモコンでラジオのスイッチを入れる習慣がついてしまった。

 決まってダイヤルを合わせるのは、NHKの「ラジオ深夜便」だ。ニュースを読んでいた頃のアナウンサーの顔が浮かび、懐かしい昭和歌謡が流れてくる日も多い。午後11時から翌日の午前5時まで6時間の放送だが、1時間ごとに5分のニュースをはさんでコーナーが進む。私がよく耳にするのが、午前2時台の「ロマンチックコンサート」と3時台の「にっぽんの歌こころの歌」、そして4時台の「明日へのことば」である。「ロマンチックコンサート」ではジャパニーズ・ポップスもあれば映画音楽、クラシック音楽の日もある。「にっぽんの歌こころの歌」では、一人の作詞家、作曲家に特化した日もあれば、一人の歌手の代表曲が次々に流れてくる日もある。

 たまたまラジオをつけた3月のとある日、3時台の「昭和歌謡 スター・セレクション」は都はるみ特集だった。「好きになった人」「アンコ椿は恋の花」「北の宿から」「涙の連絡船」「大阪しぐれ」といった聴き慣れたヒット曲が次々と流れてきた。和服をキリリと着て、左手でマイクを斜めに持ち、「はるみ節」とよばれる独特のコブシ回し、艶と張りのある声で熱唱する姿が蘇ってきた。

 昭和40年~50年代数多くのヒット曲を飛ばし、今も歌い継がれる名曲を残した都はるみは、国民的演歌歌手といっていいだろう。1964年3月「困るのことヨ」(作詞・西沢爽、作曲・遠藤実、編曲・安藤実親)でデビューしてから、2014年8月20日リリースの「冬の海峡」(作詞・さいとう大三、作詞・岡千秋、作曲・南郷達也)まで実に半世紀にわたり、139曲のシングルをリリースしている。

 その日は残念ながらラジオから流れなかったが、筆者が一番好きなのは、77年10月1日リリースの「しあわせ岬」(作詞・たかたかし、作曲・岩久茂、編曲・高田弘)である。テレビ朝日系列の土曜ワイド劇場「家政婦は見た」のドラマの中で、家政婦・秋子を演じる市原悦子が「しあわせ岬」を歌っているのを観たことがきっかけだった。さすがに演技派女優の市原の歌唱は感情がこもっていてインパクトがあり元歌を聴きたくなったのだ。都はるみの「しあわせ岬」は、〝しあわせになりたいなぁ〟と、呟くような歌い出しにぐっと惹きつけられ、北の岬で愛しい人の帰りを待つ女性の気持ちが徐々に昂まって最後のパーツまで盛り上げる。何度聴いても、聴き惚れてしまう名曲だ。「はるみの語り物は絶品」と評価され、この年の第28回NHK紅白歌合戦でも歌った。

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