24.06.06 update

〝日本一の美少年〟と謳われ、昭和青春歌謡四天王の一人に数えられるアイドルの昭和38年のデビュー曲  三田明「美しい十代」

 1963年(昭和38)6月、詰襟の学生服姿で日本コロムビアから「高校三年生」でデビューした舟木一夫が、またたくまにアイドルの座に就くや、各レコード会社は、舟木に追いつけ、追い越せとばかりに十代の男の子たちを立て続けにデビューさせた。そして同年10月に日本ビクターから「美しい十代」でデビューしたのが三田明だった。十代の美しさ、爽やかさに加え、昔の美男子にはなかった可愛らしさがプラスされていると、写真家の秋山庄太郎は、〝日本一の美少年〟と三田明を絶賛した。美を切り取る写真家のお墨付きだけに、説得力があった。ちなみに、橋幸夫、舟木一夫と共に後に〝御三家〟と呼ばれるようになる西郷輝彦のデビューは、翌64年のことである。その御三家+三田明で昭和歌謡アイドル四天王なる称号がついた。三田明には、それほど、無視できない御三家に劣らぬ魅力があったということだろう。

 芸能雑誌の月刊「平凡」と並ぶ人気月刊誌で〝若い人ならみんな読んでるスター雑誌〟と謳った「明星」の表紙は、一部、鶴田浩二や佐田啓二が登場したこともあるが、52年の創刊号以来その時代の人気女優たちが飾っていた。ただ、62年の12月号の表紙は、結婚記念号として美空ひばりと小林旭が一緒に登場している。男性スターたちがレギュラーとして女性スターとペアで表紙を飾るようになったのは、64年5月号の三田明が最初である。お相手はいしだあゆみだった。三田よりデビューが早い舟木が表紙に登場したのは、翌6月号だった。三田明のほうが早かった。映画界の斜陽化にともないテレビの時代になってきたということもあるが、美少年・三田明の登場によって、雑誌の編集方針が変わったとも見受けられるのだ。

 四天王が表紙に登場した64年から最後の登場となる68年まで、四天王が表紙に登場した回数を数えてみると、西郷が11回、三田が10回、舟木が9回、橋が5回だった。66年には、舟木、西郷、三田は、それぞれ3回ずつ登場している。まさに芸能界は四天王の時代だったとも言えるだろう。それまで、スターと言えば映画スターであり、赤木圭一郎、石原裕次郎、小林旭、大川橋蔵、中村錦之助(後に萬屋錦之介)、市川雷蔵などの男性スター俳優が、雑誌のグラビアなどを飾る機会が多かったが、この時代、世の女性たちの心を捉えたのは、テレビが生んだ現代的で爽やかな同世代の若手男性歌手たちだったのだ。

 ペアを組んだ女性アイドルは、吉永小百合を筆頭に、本間千代子、姿美千子、高田美和、和泉雅子、恵とも子、いしだあゆみ、園まり、由美かおるたちだった。また、64年3月号の「明星」の新聞広告には、〝舟木一夫 三田明があいました〟のキャッチで、舟木と三田が肩を組んだ写真が掲載されていた。

1 2

映画は死なず

新着記事

  • 2024.10.03
    令和の今もコーラスで親しまれるH2Oが昭和58年リ...

    H2O「想い出がいっぱい」

  • 2024.10.02
    松田優作唯一のドキュメンタリー映画『SOUL RE...

    文=河井真也

  • 2024.10.02
    「世界の持続可能な観光地TOP 100選」第1位─...

    佐藤正毅「箱根DMO」戦略推進部マネージャー

  • 2024.10.01
    永青文庫所蔵の織田信長の手紙が一挙公開される!「信...

    10月5日( 土)~12月1日( 日)

  • 2024.09.30
    お一人様用

    【スマホ散歩】文:写真 萩原朔美

  • 2024.09.30
    第3回 森繁久彌(前編)☆ 権威や体制に抗った喜劇...

    文=高田雅彦

  • 2024.09.27
    【帯津良一・88歳のときめき健康法】女優・浜辺美波...

    文=帯津良一

  • 2024.09.26
    西城秀樹は昭和50年「白い教会」を歌ってバカヤロー...

    美樹克彦「花はおそかった」

  • 2024.09.24
    老いは戯れるもの─萩原 朔美の日々   

    第23回 キジュからの現場報告

  • 2024.09.24
    本国パキスタンで一旦は上映禁止となった話題作、『ジ...

    応募〆切:10月15日(火)

特集 special feature 

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!