第2幕
INTERVIEW 川口敦子&中野誠也
撮影=福山楡青/ 取材・構成=二見屋良樹

川口敦子さんと中野誠也さん。共に俳優座に60年以上在団し、
現在も舞台に立ち続けるベテラン俳優である。
川口さんは2月には、創立80年記念の新作舞台『スターリン』への出演が控えている。
〝俳優座の顔〟とも言えるお二人に、
俳優という立場から見た劇団俳優座の魅力を語っていただいた。
多くの新劇俳優たち同様、川口敦子さんも、中野誠也さんも劇団俳優座に所属しながら、数多くの映画やテレビドラマに出演している。お二人が出演していたドラマを幼少期から観てきた私にとっては、むしろ、映像作品での印象がなじみ深いと言ってもいいくらいだ。
◆近代演劇のリアリズムの芝居ができる俳優を育成した養成所

川口 新潟の長岡から大学進学で上京しましたが、何か満たされないものを感じていたんです。その当時、三越劇場では文学座、民藝、俳優座など、連続して新劇の公演を上演していました。その一つを観に行ったときに、新劇の研究生の人たちが、あまりにも生き生きとしていて、鬱屈していた私は、ああこういうふうになりたい、と思ったんですね。
──新劇が思想的にも解禁になって、演劇がまた盛んになり始めた頃である。川口は、新聞で劇団員を募集していた旗揚げしたばかりの小さな劇団<現代派>に参加することにした。
川口 演劇そのものにあこがれたというのではなかったんです。誘ってくれた友人は来なくて、結局私一人で参加したんです。お寺のお堂を借りて、夜だけ稽古をしているような状況でした。そこに集まったのが、後に文学座に入られた西本裕行さんとか、俳優座に入る山本清とか、聖心女子大学の教授になった哲学の細井雄介さんとか、今からすると多士済々と言える人たちでした。そこで、まだ学芸会にもならないような芝居を1本やったのが初めての芝居経験でした。半年ほどして、一緒に入った若者たちが本当に芝居がやりたければここにいたらダメだと言い出したんです。
──俳優座の募集を目にしたのは、そんな頃だった。
川口 当時、養成所というのが評判になっていました。文学座を受ける人もいて、西本さんは文学座を受け、私は山本清と一緒に俳優座を受けたんです。システマティックに俳優を養成する場を初めて創ったのが、俳優座の養成所でした。その噂は耳に入ってきていましたが、私は6期生なので養成所が作られて6年経っていたんです。なぜか、どうしても俳優座じゃなればダメだと神がかり的に思ったんです。だから、当時20数倍なんていう難関でしたが、たとえ何百人応募者がいても私くらい俳優座に入りたいと思っている人はいないっていうくらいの勢いで受験しました。